SNSに潜む恐怖と監視の実態

現代不安

私は普通の大学生だ。SNSは当たり前のように使っていた。学校の友達や趣味の合う人たちと繋がるための大事なツールだった。しかし、そこから始まった恐怖が私の生活を侵食することになるとは、まったく予想していなかった。

それはある日、私がいつものようにTwitterでツイートをしたときのことだった。最初は些細なことだった。「今日は授業が早く終わったから、カフェに寄ってきた」と、何気ない日常を投稿しただけだった。しかし、その投稿に対して、見知らぬアカウントからリプライがついた。「カフェでの時間はゆっくりできましたか?」という内容だ。プロフィールを見ても、まったく見覚えのない名前だった。ただのフレンドリーな挨拶だろう、とそのときは深く考えなかった。

しかし、そのアカウントからはその日を境に、私の投稿にほぼ毎回コメントがつくようになった。「今日は晴れて気持ちいいですね」「この映画、私も好きです」といった感じで、さりげなく私の生活に入り込んでくる。少し気味が悪いと思ったが、相手は実害もなかったし、SNS上ではよくあることだと考えて放置していた。

ここからが、本当に奇妙なことが起き始めた。ある日、地元のショッピングモールで一人で買い物をしていると、そのアカウントと同じ名前のタグがついたDMが届いた。「今日は赤いシャツがよく似合ってますよね」とのメッセージ。驚いて周囲を見回したが、それらしい人影は見当たらない。偶然にしても出来過ぎだが、誰か友人が冗談半分で私を見つけてDMを送ったのかもしれない、そう考えてその日はやり過ごした。

しかしその後も、そのアカウントは私の行動を逐一知っているかのようにコメントを続けてきた。「今日は○○駅で降りましたよね」「△△通りのカフェ、オススメです」といった具合に。ここまでくると、偶然では片付けられない。明らかに誰かが私を監視している。しかし、友人に相談しても「ただの偶然だよ、SNSあるある」と軽く流される。私も最初はそう自分に言い聞かせていたが、内心不安が募っていた。

数日後、警察に相談することを真剣に考え始めた。そうするために、再度そのアカウントを探してみたのだが、驚いたことに見つからない。もともとツイートには匿名性があるが、それでも私の記憶にはっきりと残っている特徴的なアバターやユーザー名が消えていたのだ。しかし、その時点でアカウントだけでなく、そのユーザーからのリプライやDMもすべて消えていた。このことが、さらに私の不安を掻き立てた。

次の日、学校の帰り道、無性に怖くなった私は少し遠回りをして帰ることにした。寄り道をして人通りの多い道を歩く選択をしたのだが、ふと気づくと後ろから視線を感じた。振り向くと、そこには見知らぬ男が立っていた。彼が何者なのか、私にはまったく見当がつかないが、なぜか直感的にあのアカウントと関係があると感じた。動揺して、急いで走り去った。

帰宅後、念のため家のドアや窓をすべて確認した。誰に相談すべきか頭を悩ませたが、具体的な被害がないため、警察にも事情を説明し難い。SNS上での些細なやり取りが、まさかここまでの事態になるとは…。その日を境に、外出するのが極度に怖くなり、必要最低限の外出のみを行うようになった。

ある日、息抜きをしようと久しぶりにInstagramを開いてみた。すると、そこで衝撃的な事実が発覚した。私の知らない間に、私の名前を使って複数のフェイクアカウントが作られており、私の写真が勝手に使用されていた。中には私が投稿した覚えのない、プライベートな場所での写真も混じっていた。背筋が凍る思いだった。誰かが私を監視し、写真を撮り、それをSNSに流しているとしか考えられない。

恐怖と不安で体が震える。警察に相談し、全て調査を依頼することにした。生活は一変し、安全のために警察の助言を受けてSNSアカウントを削除し、家族や信頼できる友人以外との連絡を絶った。ついに、私の平穏な日常は奪われてしまったのだが、それでも命に関わる事態を避けられたことを、心から安堵している自分がいた。

しかし、未だに思う。あのアカウントの持ち主が何を目的にしていたのか、どこまで私を監視していたのか。今もなお、背後で私の生活を覗く誰かがいるのではないか、という不安が消えることはない。SNSを通じて日常に入り込む見えない恐怖、それが私を常に監視しているような気がしてならないのだ。今も私の背中では、誰かが笑っているのだろうか。

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