私はごく普通の会社員で、都会のマンションに一人暮らしをしています。特に珍しいこともない日々を過ごしていたのですが、ある日を境に、私の生活は一変しました。それはスマートフォンの通知音とともに始まりました。
その日の夜、自宅でSNSを見ていた私は、いつものように何気なく通知をチェックしていました。しかし、見慣れないアカウントからのフォローリクエストが届いていたのです。そのアカウントにはプロフィールもなく、投稿もありません。怪訝に思いつつも、大したことはないと思って承認しました。それがいけなかったのかもしれません。
次の日から、私の投稿に必ずそのアカウントからの「いいね」が付き始めました。最初は気にしていなかったのですが、投稿するたびに数分以内に反応があるため、少し気味が悪く思えてきました。さらに数日経つと、そのアカウントはまるで私の生活を知っているかのように、私が訪れた場所やイベントに関連する内容のメッセージを送ってくるようになりました。
「昨日のカフェは居心地よさそうだね」「次の旅行先は楽しみだね」——最初は偶然かと思いましたが、さすがに度重なるとそうではないと気づきました。彼らは私の動向を完全に把握しているのです。
恐ろしくなった私はすぐにそのアカウントをブロックし、プライバシー設定を見直しました。しかし、次の日になると別の新しいアカウントから再びフォローリクエストが届き、私の普段の生活を察知したようなコメントが寄せられます。削除したプロファイルからの情報漏洩なのか、あるいはもっと深刻なのか、私には判断がつきませんでした。
日に日にそのアカウントの存在はエスカレートしました。私の住んでいるマンションの玄関先で撮影されたと思われる写真が送られてきた時、初めて本気で恐怖を感じ、すぐに警察に相談することにしました。
警察は丁寧に話を聞いてくれましたが、「証拠が不十分であり、法的にすぐに動くのは難しい」という回答でした。自分が監視され、追い詰められている感覚が消えず、次第に私は外に出るのも、SNSを開くのも不安でたまらなくなりました。
そんなある日、恐ろしい出来事が起こりました。仕事から帰ると、自分の部屋の扉に謎のメモが挟まっていたのです。「もうすぐ会えるね」とだけ書かれたそのメモは、誰にも見せたことのない私のスマートフォンケースに印刷された独特のデザインが背景になっていました。背筋が凍りつく思いとともに、私は今まさに危険が迫っていることを悟りました。
私はその夜、友人に相談し、彼の家に泊まることにしました。友人は、私が落ち着くまで部屋の交代を提案してくれ、私はひとまずその申し出を受け入れることにしました。
しかし、それでも不安は消え去りませんでした。友人宅にいても、新しいアカウントからメッセージが届くのです。「今どこにいるの?」という一文に、ついに私の精神は限界を迎えました。
再び警察に行き、これまでの経緯を詳しく説明したところ、警察もようやく深刻さを理解してくださり、本格的な調査を開始してくれることになりました。結果、驚くべき事実が判明しました。
私のSNSアカウントはすでに何者かにハッキングされ、位置情報やプライバシー設定もすべて丸裸にされていたのです。さらに、マンションの監視カメラには、見覚えのない不審な人物が何度も出入りする様子が記録されていました。怖くなった私は、それ以上の情報を確認する勇気が持てませんでした。
数週間後、不審人物は警察によって逮捕されました。彼は私の同僚で、密かに私に執着していたことが発覚しました。彼のアパートからは、私の日常を記録した詳細なメモと、私のアカウントに侵入するための機器が押収されたと聞いています。
この一件で痛感したのは、インターネット上での匿名性や個人情報の管理の重要性です。私たちが日々接しているSNSは、ふと気を抜くと自分の身を危険にさらす恐れがあることを知りました。
今では、SNSの使い方を見直し、大切な情報をむやみに公開しないよう心がけています。誰もが巻き込まれる可能性のあるこの現代社会の「怖さ」が、いかに現実的かを身をもって体験しました。安全であると思っていた場所の危うさを、改めて考えさせられた出来事でした。