以下は、SNSを通じてストーカー被害に遭った女性の実体験を元にしたインタビュー形式の話です。
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私はライターの山田健太です。今日は、とある女性のリアルな体験談をお届けします。彼女が経験したのは、SNSを介したストーカー行為による恐怖と不安の日々でした。
先日、彼女——仮に佐藤さんとしましょう——に都内のカフェでお話を伺うことができました。佐藤さんは、小柄で物静かな印象の女性でした。以下は彼女の語った内容を整理してお伝えします。
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「最初は、ほんの些細なことから始まりました。私は日常のことをSNSに写真付きで投稿していたんです。場所を特定されるようなことはなるべく避けていたつもりでした。でも、ある日、仕事から帰ってきたら家のポストに私宛の手紙が入っていたんです。その手紙には、『君の投稿をいつも見ています。君の笑顔が好きです』と書かれていました。
その時は、いたずらかと思ったんです。こんなこと、他にも経験してる人はいるって。いちいち気にしないでおこうと自分に言い聞かせました。でも、その後も何度か似たような手紙が届くようになったんです。」
佐藤さんは手元でカップをぎゅっと握りしめました。それが彼女の精神的緊張を表しているようでした。
「それからしばらくして、SNSのダイレクトメッセージにも同じような内容のものが届くようになりました。それが私の日常の些細なことに触れていると気づいて、急に怖くなったんです。『今日の午前中はあのカフェにいたね』とか、『新しいカバンが似合ってたよ』とか。どこかで私を見ているような内容でした。
気味が悪くて、すぐにアカウント名を調べました。でも、そのアカウントは非公開で、どんな人なのか全然わからなかったんです。プロフィールには、ただ『あなたをずっと見守っています』とだけ書かれていました。」
ここで私は、佐藤さんがこうした状況にどう対処していたのか尋ねました。彼女は少しため息混じりに答えました。
「最初は誰にも言わずに、自分でなんとかしようと思いました。でもそれが間違いでした。状況は悪化するばかりで、夜中に物音がすると飛び上がるくらい神経質になってしまって…。仕事にも支障が出始めたんです。思い切って友人に相談してみたら、すぐに警察に連絡するべきだって言われました。彼らの助言を聞いて、やっと警察に相談したんです。」
「警察の反応はどうでしたか?」と私は尋ねました。
「警察は親身に対応してくれました。でも、具体的な情報が少ないと動きが取れなくて…。とりあえずSNSのアカウントを非公開にして、違うアカウントを作ることを進められました。それでも続くようなら、さらに具体的な対策を考えましょうって。そう言われても、内心不安でいっぱいでした。すでに相手は私の日常をかなり詳しく知っているようでしたから。」
彼女の話を聞いていた私は、一層事態の深刻さを感じ始めました。
「それから何があったんですか」と更に話を促しました。
「しばらくは、SNSの非公開アカウントのおかげでメッセージは来なくなりました。でも、私の行動を監視しているような気配は消えませんでした。ある日、帰り道に不審な足音を感じて振り返ると、見知らぬ男の人がいました。特徴的な帽子をかぶっていて、すぐにその人も私に気づいたみたいで、顔を隠して逃げていきました。
その場はとにかく急いで家に戻りましたが、しばらく心臓がバクバクして落ち着くことができませんでした。それ以上怖いのは、私はその男の顔を覚えていなくて、ただ帽子ということしか思い出せませんでした。」
彼女は声を震わせながら話しました。私は彼女の状況に思わず息を飲みました。これが彼女の現実だったのです。
「最終的に警察に再度相談しに行ったら、その日はすぐにパトロールを強化してくれました。そのおかげで、心持ち安心感はありました。それでもその後も、自宅付近で不審な動きを感じることがあったので、思い切って引っ越すことにしたんです。
引越し先については、SNSでは一切触れないようにし、新しい生活を始めました。その後は、怪しい動きや手紙が届くことはなくなりました。今でも時折、誰かに見られているような不安感がありますが、少なくとも直接的な危険はなくなったように感じます。」
佐藤さんは話の最後にこう付け加えました。「SNSはとても便利で楽しいから、ついついプライベートなことを発信しがちですが、それを悪用しようとする人がいることを忘れてはいけません。私の経験が、少しでも誰かの役に立てればと思います。」
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彼女の体験を聞いた後、私もSNSの使い方について考えさせられました。SNSは便利で楽しいツールですが、その裏に潜むリスクについて、私たちはもっと理解を深め、安全な利用方法を模索する必要があります。現代の便利さの裏には、見えない不安が潜んでいることを改めて感じたインタビューでした。