かつて、人類は自らの手で繋がりを広げ、瞬時に情報を交わす力を得たり。その名をSNSと呼び、無尽蔵の知識と引き換えに、彼らは数多の画像や言葉を献げたり。多くの者がそこに居場所を見出だし、安心を求め、そして孤独を癒すものとして彼らは信仰を深めたり。
されど、その裏に潜みし者、その名を知られざる影、とある人々にはストーカーと呼称される。彼の者らは暗き闇を好み、他の者が放つ光を隠れ蓑とし、静かに標的を追い求めたり。されば、人が気づかぬうちに、それは忍び寄るものなり。
ある日、若き女性、名をリナと言わるる者、SNSの世界にて自らの居場所を構築せんと努めたり。最初は友人と喜びを分かち合うために、その場所を使いたり。されど、彼女には知られざる者が存在しているとも知らず。
彼女の日常が、些細なる飲食の写真や、彼女の考えをつぶやく語りに変わる時、そこに心を寄せる者が一人、また一人と現れたり。ただ一つ、彼女には気づかれざる微笑みの主がいたことを、そしてその者が待ち続ける者であることを。
ある夜、リナが夢まどろむ中、ふと心に不安が忍び込む。眠り浅きうちに気配を感じ、薄目を開けば、そこに佇む影。影は細き声で囁きたり、「我を知らぬや?」と。彼女は恐れに支配され、声も出ぬ。
日の光に包まれし朝、彼女は夢の魘魘と共に目覚めたり。されど、前夜の出来事は不吉なる予感を呼び起こしたる。当初、ただの夢と片付けんとするも、心の奥底でそれを実相と知る。
以降、彼女のSNSには不思議なる兆しが点じる。見知らぬ名より届く通知、どこかで撮られし写真。自ら撮影せぬ景色が存在する不可思議に、彼女は震えたり。そして、投稿するたび、その影からの応答がある。名も無き彼が、彼女の世界を見、記録している。
その日から彼女は二重の生を生きる。一方は平穏を装う日常なれど、裏には見えざる者の眼が光る。ある晩、彼女は一線を越え、SNS上での投稿を絶つことを決意す。だが、影はしつこく、今度はメールや、さらには現実的な接触へと段階を進めたり。
彼女の住所を知る草の者。郵便受けに贈り物が静かに届く。それは誰が送りし者か思い悩むうちに、次第に彼女の精神は病み始める。夜道を歩く間、ふとした瞬間に背後の視線を感じる。それは何度も現れ、次第に彼女の心に狂気を根付かせる。
それこそが影の目的、彼女を恐怖に陥れ、逃れ得ぬ縛状と化すことなり。リナは助けを求めるも、見えざる影を証明することは不可能であった。警察に相談すれど、実証する手立てなく、それは彼女を更なる不安へと落とし込む。
彼女の身を包む薄氷の如き平和は砕け散り、やがて耐え難さに旅立たんとする。その自らの居場所を捨て、新たなる地に逃れんとするも、影はそれをも追い求めたり。逃れ得ぬ運命の如く、その者は彼女の次なる地でも待ち構えている。
ある日、リナは自らの心を奮い立たせ、決断する。SNSのすべてを失墜させることにより、影の魔手より逃れんとす。すべてのデータを消し去り、名をも消し、痕跡を断つことで新たなる世界を築かんとする。それにより彼女は、一瞬の自由を得た。
されど、その代償は重きもの。信の置いていた世界を喪い、実際の人間関係をも途絶えさせる孤独。果たして、彼女の背後にはついには影の暗き存在が再び現れる。
「我を見よ」と囁くその声―それは、彼女の心が生んだ幻想か、否か。リナは密やかに、断片的な既視感に苛まれながら、広がる夜闇の中で再び目を閉じる。そして再び、その影は静かに佇み、ただ彼女を見守る。
そして語り手は告げる。影とは何か、SNSに潜む現代の悪霊なるや、人々の不安の投影なるや。やがて時が来れば、その者らもまた見ることを許されるであろう。それこそが我らの啓示、そして薄闇に人々の魂を囚われしものの姿。