不気味な影との遭遇

異次元

私はかつて不思議な体験をし、今なお心の底に深い恐怖を抱えて生きている。それはまるで異次元の存在とでもいうべきものとの遭遇だった。この体験を語ることで、少しでもその恐怖を和らげることができればと思い、筆を取った。

あれは私がまだ大学生だった頃の話だ。サークル活動で訪れた地方の古びた町でのこと。町に着いたその日、先輩たちと共に地元の名所を訪ね歩いた。美しい山並みや清流に癒される、穏やかな田舎の風景が広がっていた。だが、その日の夕方、ふとしたきっかけで足を踏み入れた辺鄙な神社が、私の運命を大きく狂わせることになった。

その神社は町の外れ、木々に囲まれた場所にひっそりと佇んでいた。参道を歩くと、いかにも長い年月を経たであろう苔むした石灯籠が並んでおり、薄暗い雰囲気を醸し出していた。鳥居をくぐると不気味な静寂が耳を支配し、まるで時間が止まったかのようだった。

本殿に近づいていくうちに、何か置いてあるのが見えた。それは、尋常ではない数のお札だった。風でひらひらと舞うそれらは、ただの装飾とは思えない。言い知れぬ不安が胸を締めつけたが、好奇心に逆らえずさらに近づいていく。

本殿の前には古めかしい鈴があり、何者かの手で削られたように金属が剥き出しになっていた。そして、その時だった。不意に周囲の空気が変わり、背筋に冷たいものが走るのを感じた。何か……見えない何かがこちらを見ている。

慌てて踵を返して逃げ出し、人通りのある本道へ戻ると、先ほどの感覚は消え去った。だが、心の奥には一抹の不安が残っていた。その日はそのまま他の皆と合流して夜には宴会があった。賑やかに酒を飲み、今日一日の出来事を忘れようとしたが、あの神社のことが頭から離れなかった。

翌日、夜明けと共に目が覚めた私を待ち受けていたのは、奇妙な感覚だった。まるで耳の奥で低い唸り声が聞こえるようで、胸が締めつけられるように重かった。迷惑をかけまいと黙っていたが、徐々にその感覚は現実感を伴ってきた。

その日の午後、サークルの皆と町を散策している最中、私の視界の端に奇妙なものが映り込んだ。それは黒い人影のようなものだったが、不自然に形を変えては消えるのだった。最初は疲れからくる錯覚だと思ったし、他の誰も気づいていないようだったので、黙ってやり過ごそうとした。

その夜、宿に戻ると不安が頂点に達し、とうとう病院に行く決意をした。翌朝、一人で宿を出て、地元の小規模な病院を訪れた。医者は特に身体に異変は見られないと告げたが、その表情にはどこか猜疑心めいたものがあった。

宿に戻る途中、再びあの黒い影が視界をかすめた。今度ははっきりと私を見ていた。そしてそれは、次の瞬間、信じられない速さで私へと迫ってきた。全身が動けなくなり、ただじっとその影を見つめることしかできなかった。その顔もない影が手を伸ばすように私の胸に触れた瞬間、視界が真っ暗になった。

どれだけの時間が経ったのか、目を開けると私は病院のベッドに横たわっていた。地元の警察官が私の話を聞こうと来ていたが、私は何を言って良いのかわからなかった。ただ、あの影のことを話すと、彼は一瞬驚いた様子を見せたが、何も言わずにメモをとり続けた。

その後、再び町を訪れることも、その時の出来事を振り返ることすら意識して避けていた。しかし、あの影の感覚は時折胸を突くように蘇る。それはまるで、今もどこかで私を見ているかのような感覚だった。

私の話を聞いても信じてもらえないかもしれない。だが、あの影は確かに存在していた。どこか異次元の、理解を超えた存在が確かにこの世にある。私の体験はそれを物語っている。この世には、未だ知られていない恐怖が潜んでいるのかもしれないと、今も私は心の底から感じている。

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