これは俺が最近体験した、今も続いている恐怖の話だ。俺は普段、ある匿名掲示板をよく利用しているんだけど、その板には「ネタスレ」っていう、半信半疑の怪談スレがあるんだ。暇つぶしに毎晩のように覗いては、「どうせ嘘だろ」とか思いながら楽しんでた。だけど、そのスレで出会ったある話が、俺の生活をぶち壊すことになるなんて、その時は思いもしなかった。
ある日、いつものようにスレを見てたら、特に目を引く投稿があった。内容はシンプルで、「家の中に何かがいる」って一文だけ。普段のネタスレなら、もっと詳細な話とか、誇張された内容が多いけど、これだけあっさりした書き込みは珍しかった。それに、スレ主が「リアルタイムで報告する」って続けていたのが好奇心をそそった。俺はその投稿者の書き込みをリアルタイムで追ってみることにした。
投稿者は「Ａ」と名乗り、引っ越したばかりの一人暮らしのアパートで、妙な音や気配を感じるようになったことから、これは始まったらしい。最初は俺を含めみんな、「風の音だろう」「ご近所さんの生活音じゃない？」とか、半信半疑のコメントを返していた。でも、Ａがその後も細かく報告を続けるたびに、スレ全体に変な緊張感が漂い始めたんだ。
Ａの報告は次第に詳細になっていった。「夜中、キッチンから物音がする」「窓やドアが勝手に開閉する」「風呂場の鏡に見覚えのない顔が映った気がする」など、内容はどんどん怖くなっていった。それでも俺は、「どうせネタでしょ」って半信半疑な気持ちを持ちながら読み続けてた。
だが、ある時を境に俺もただの傍観者ではいられなくなった。ある夜、Ａの書き込みが急に止まったんだ。それまで順調に５分おきに報告があったのが、突然途絶えた。そして半日後、Ａは再び書き込み始めたんだが、その内容が異常だった。
「誰か助けてくれ、あいつがこっちをずっと見ている、動けない」とだけ書かれ、続けて何度も助けを求めるメッセージが続いた。スレは一気にパニック状態になり、誰かが警察に通報したほうがいいって言い出した。その時俺も、これは単なる作り話じゃないかもしれないと初めて思った。
その日の夜、寝ようとした時、俺のスマホにちょっと奇妙な通知が来た。身に覚えのないメールアドレスからのメールだった。その内容を読んで、俺は血の気が引いた。そこには「あなたも見られている」と書かれていたんだ。偶然かとも思ったけど、ぞっとする感覚を抑えきれなかった。
その翌日から、俺の日常も少しずつおかしくなり始めた。家の中で物がよく行方不明になる。ドアや窓の施錠をどれだけ確認しても、翌朝には必ず開いている。そして何よりも、毎晩のように、誰かに見られている気がして眠れないんだ。
俺はＡのスレに戻り、何か手掛かりを探そうとしたが、そのスレはすでに膨大な書き込みで進みすぎていて、Ａの最後の書き込み以降、誰もそれらしい手掛かりは得られていないようだった。それどころか、Ａの書き込みはその日以来途絶えてしまい、今では完全に更新が止まっていた。
そんな時、スレに奇妙な書き込みが増え始めた。「次はあなたの番だ」という内容の、それも複数の異なるＩＤで。俺は、Ａが体験していたことが、まるで俺にも降りかかっているように感じ始めた。
数日後、俺はついに限界を迎え、友人にこのことを打ち明け、相談することにした。すると友人は、「お祓いでも何でもいいから、まずは家から離れた方がいい」と言ってくれた。俺はそのアドバイスに従い、実家にしばらく逃げ込むことにした。
実家で過ごし始めると、気のせいか少しずつだが落ち着きを取り戻すことができた。あれ以来、意味不明なメールや、見られているような感覚はなくなった。だけど結局、Ａの消息は分からずじまいだった。
だが、最後にひとつだけ奇妙なことが起こったんだ。実家にいたある日の夜、父親が突然、「誰か来たみたいだ」と言い出した。玄関に着くと、そこには何もない。でもその後、ポストに一枚の紙が入っていた。それには「次は誰かな？」とだけ。
今でも俺は考える。俺とＡとを繋いでいた、あのスレの正体は何だったんだろうか。そして、あの「何か」は、結局何者だったんだろう。俺は恐怖と不安に包まれながらも、どこかでこの体験が単なる悪い夢であってほしいと願っている。だが、あの奇妙な緊張感は今も俺の生活に影を落としているのは確かだ。
