—
### 4月1日
新しい仕事が始まる。長い間探していた職場だ。帰宅後、追想しながらスケジュール帳に入社式の詳細を書き留める。心地よい疲れを感じつつ、満足感でいっぱいだ。
### 4月8日
一週間が経過。職場の環境に少しずつ慣れてきた。来週は会議が続くが、楽しみにしている。次々と予定が埋まっていくスケジュール帳を見ると、なんだか自分が社会の一部になっているという実感が湧いてくる。
### 4月13日
今日は出社するとデスクに不思議なメモが置かれていた。「彼女の声を聞かないで」。同僚のいたずらかと思い、放っておくことにした。スケジュールには親しい友人と会う約束を記している。
### 4月19日
最近、夜になると誰もいないはずの家で足音が聞こえるようになった。スケジュール帳に深夜の覚醒と記しておく。今日は会社の懇親会が予定されている。気を紛らわせるにはいい機会だ。
### 4月26日
懇親会は楽しかったが、帰り道に不思議な女性と出会った。「あなたはまだ知らないのね」と笑った彼女。意味を問い詰めようとしたが、姿を消してしまった。スケジュールに彼女の言葉を記録。本当に何が起こっているのか?
### 5月3日
実家から古い写真が届いた。箱を開けると、見覚えのない昔の家族写真。スケジュールには「調査必要」と書く。母に問い合わせるが、「そんな写真、知らない」との回答。ますます不可解だ。
### 5月10日
同僚たちがいつもとは違う表情で私を見る。何か隠している様子だ。昼休みには新たなメモを発見。「彼女を怒らせないで」。スケジュールに不安を正直に記す。自分の心が乱れているのか?
### 5月17日
寝不足が続く。夜中に聞こえる足音は増えるばかりで、夢なのか現実なのかも曖昧になってきた。スケジュールに睡眠時間の記載が減っていくのを見ると、正気でいられる気がしない。調査が必要だ。
### 5月25日
仕事に集中できない。あの女性の声が頭の中をかき乱す。「あなたのせいで、みんな苦しんでいる」。スケジュール帳に書かれた予定が消され、代わりに意味不明な文字が書き足される。誰の仕業か?
### 6月1日
会社で一人だけ会議に呼ばれなかった。孤立感を募らせる。スケジュール帳がどんどん空白になっていく。同僚に尋ねても何が起きているのか誰も教えてくれない。全てが自分から遠ざかっていく。
### 6月8日
夜中の足音はもう止まらない。スケジュールには「終わりなき闇」、ただこの一文が何度も何度も記載される。どんな方法で書かれているかは不明だが、自分が記録した覚えはない。まるで誰かが私の意識を操っているようだ。
### 6月15日
不意に思い立ち、あの古い写真の背景を調べると知り合いが同じく写っていることが判明した。その一人が職場で姿を消したと聞かされる。スケジュールに「因縁の鎖」追加。恐怖が現実味を帯びてきた。
### 6月23日
失踪した同僚の件で警察が調査に入った。私にも質問が来たが、何も知らないとしか言いようがない。スケジュールには「不明」ばかりが記載される。何をしても空虚さだけが残る。
### 6月30日
やっとわかった。あの女性は、過去に自分の家族が関わった事件の被害者だ。それが原因で、私に呪いがかかっている。気づいた時には、スケジュール帳には自分の名前の上に大きな赤い文字で「行方不明」と書かれていた。
### 7月7日
最後の日記を書く。すべてを放棄することしかできない。他に方法はない。スケジュール帳の最後のページには、「彼女に赦しを」とだけ記しておいた。私がここから消えることで、全てが消えていくことを願う。
### 7月15日
スケジュール帳は私の意識とは無関係に、次の現われるなき”犠牲者”の記録を始めたかのように、新しい名前を次々と記している。私の存在はこの帳面に吸い込まれ、未来のどこかでまた噴き出していくのであろう。
—