【2023年9月14日】
今日は奇妙な出来事があった。私は祖母の古い家を整理していた時、古びた木箱を見つけた。何か不思議な魅力に引き寄せられ、箱の中を覗いてみると、一冊の古びた手帳が入っていた。手帳にはとても美しい筆跡で、「藤原京子」と書かれていた。母によれば、京子という人物は私の曾祖母に当たるらしい。興味が湧き、その手帳を持ち帰り、読み始めた。
【2023年9月15日】
京子の手記には、戦前の生活と彼女の若き日の感情が綴られていた。しかし、読み進めるうちに、あるページに目が留まった。そこには、「私が犯した罪」という見出しがあり、彼女が呪われたと噂されている死の木に花を捧げたことが書かれていた。呪いの原因は、一族の女が嫉妬に駆られ、彼女を陥れようと妖しい儀式を行ったことにあるという。興味半分でこの手記を読み進めているうちに、私の身にも不気味な出来事が次々と起こり始めた。
【2023年9月17日】
一昨日の晩、奇妙な夢を見た。私の家の前に立つ一本の黒い木が、夜明けと共に赤い花を咲かせる場面だった。目が覚めると、あの木は私の家のすぐそばに本当にあった。同じ場所で何時間も動けなくなるほど金縛りにあい、ただただ恐怖が押し寄せてきた。ただの夢が現実になったとは信じられない。
【2023年9月20日】
数日前から、小さな不運が続いている。何もない場所で足を滑らせて転んだり、大切にしていた時計が突然壊れたりと、不幸の数を数えきれない。どうしたらいいかわからない。ただ、曾祖母の手記に書かれた内容が頭から離れない。手記には、呪いを解くにはその原因を知るしかないと書いてあった。私はこの場所に隠された何かを見つける必要があるのかもしれない。
【2023年9月25日】
昨夜、再びあの夢を見た。そして毎晩のことだが、不吉な声がどこからともなく聞こえてくる。「お前は見つけた、だが終わってはいない」という囁きが、何度も何度も頭の中で繰り返される。恐ろしいが、私の知らぬ間に何か重要なことを見つけたのかもしれない。再度、祖母の家に戻って調べてみることにする。
【2023年10月1日】
祖母の家に足を踏み入れると、妙に冷たい風が室内を流れているような気がした。奥の部屋で古い家具を探っていると、床下に隠された小さな箱を見つけた。中には黒ずんだ鏡と、何重にも包まれた紙切れがあった。紙には「呪いの解放は封印に帰す」と書かれ、何かを祈るように指示されていた。それをどう解釈するべきか、手をこまねいてしまった。
【2023年10月5日】
あの鏡と書かれた紙を持ち帰り、自宅でさらに調べてみることにした。鏡を覗くたびに違う風景が映り、その中には私自身が映ることもあった。そのたびに背筋が凍りつき、恐ろしさで汗が止まらない。また、あの「お前は見つけた、だが終わってはいない」という囁きが強まっている。これ以上深入りするのは危険だと感じるものの、やめられない。
【2023年10月10日】
今日、あの夢の中で初めて何かの記憶を垣間見た。京子が誰かと密かに会っている映像が流れ、それが呪いの始まりとなったようだ。彼女の涙に合わせて、赤い花が咲いた木が激しく揺れ、私もその震えを身に感じた。そして、またいつもの囁きが聞こえてきた。「封印を破れ」、と。一体どういう意味なのか、理解したいが怖い気持ちが勝っている。
【2023年10月14日】
最後に見たものを書き記す。あの手鏡に映った私の姿が、誰か他人の顔に変わるのを見た。京子だ。彼女が何を伝えたかったのか、ようやく悟った。呪いの原因は彼女が犯した罪にあるが、本当の破綻は”破る”ことにより新たに呪いを導く鍵を握ると。そして、私がそれを実行に移す者として選ばれたのだ。どうすればいいのか、本当に破っていいのか、決断できずにいる。
これが私の手記の最後となるかもしれない。呪いが解けるか、それともさらなる深みに嵌るか、明日の私にはもうわからない。ただ一つ言えるのは、私がこの言葉を書き記すことで、何かが動き出すということだけだ。