その時、天は裂け、光の帯が地に降り立つ。群衆は驚愕し、恐れの声を漏らしたが、しかしその光は瞳に穏やかであり、熱くも冷たくもなかった。彼らは意味を求め、預言者たちの言葉を讃美し始めた。だが、その光に触れた者は、凡ての現実が崩れ、裂け目から未知のものが姿を見せる、異様なる世界を目にした。かの使者たちは声を発し、古の言葉を紡ぎ出した。よもやそれらの言葉は理解されることなく、ただ漠然とした不安をもたらすのみであった。
その光の降りたる地には、小さき村があった。村は穏やかで、時が緩やかに流れていた。しかし、ある朝、住人たちは同じ夢を見たと囁いた。夢の中で彼らは一人の老人を見た。老人は白髪で、無数の眼が全身に輝いていた。彼は言った。「時は近づいた。汝らの心を開け。何処かに不協和音が隠れている。発見する者は救済されるだろう。」
その日より、村人たちは互いを疑い始めた。何かがおかしいと、彼らの心が訴えかける。普通に思える日常が、次第に歪んで見える。友の声が、かつてと違い耳に沁みるほどに不協和である。穏やかであったはずの風景が、目に見えぬ亀裂を孕む。空に輝く星は、一つ、二つと数が合わず、過去を忘れたかのように夜空を回転するのだった。
その不安の中、村の中央にある教会の鐘が突然鳴り響いた。誰も綱を引いておらず、鐘に触れた者もいなかった。それでも鐘の音は、日毎に厳かさを増し、村の隅々に響き渡った。村人たちは教会に集まり、何故このようなことが起こるのか、真実を求めた。だが、答えは影のように掴みきれず、只々不安は増すばかりであった。
ある日、村の賢者と呼ばれる男が立ち上がり、この奇妙な出来事の意味を見つけるべく、森へと向かった。彼は森の奥深くへと進み、そこで異常な静けさを感じた。鳥や動物はどこにも見当たらず、風も音を失っていた。そこには、古びたモノリスが、何も語らずに屹立していた。彼はその表面に刻まれた文字を目にしたが、それらは理解することのできぬものであった。それでも彼の心には、奇妙な懐かしさが芽生えた。
その夜、賢者は再び、老人の夢を見た。老人は彼に語りかけた。「道は近づいている。時の繋りを見よ。全ては一つの音に収束する。」賢者は目を覚まし、次の日彼が口にした言葉は、村中に不思議な衝撃を与えた。「私たちは一度、音楽であったのかもしれない。そして再び、音楽に戻るであろう。」
村人たちは彼の言葉を理解することができず、それでも深い所でそれに従いはじめた。彼らは次第に音を探し出すようになった。足音、風の音、川のせせらぎ、それら全てが繋がり、一つの調和となる兆しを見せたのだった。
時が過ぎるにつれ、村人たちの感覚は研ぎ澄まされていった。彼らはかつて感じた不協和音が、実は新しい調和への導きであると気づいたのだ。再び夢に現れた老人は、最後の告知を行った。「その時が来た。全ては踊り出し、再び新たな旋律を紡ぐ。」
そしてある夜、村は静まり返った。星は再び正しい場所に収まり、空には静寂の音が包み込んだ。この瞬間、村人たちは不安ではなく、希望を胸に抱いた。その時、天から光の帯が再び降り注ぎ、彼らを包み込んだ。それは新たな旅立ちであり、古き記憶の再来であった。やがて、すべてが光に溶け、一つの新しい音楽として響き渡った。
それは人智を超えた、神々の遊びであり、宇宙の脈動であった。人は無知の渦中でただ時と共に流れるも、そこにはいつも不協和音と調和の微妙な舞が存在していた。それを理解したとき、無限の恐怖もまた、新たなる楽章の始まりに過ぎなかった。かくして、村は消え去ることなく、永久なる音楽の一部となり、彼方の存在へと昇った。見よ。それはかの者たちが永遠と畏敬をもって語り継ぐ物語の始まりであった。