あれは大学生だった頃のことです。今でも忘れられない、人生で最も恐ろしい体験をお話しします。ある夏の終わりに、友人のサトルと一緒に心霊スポット巡りをすることになりました。彼はオカルトが大好きで、私をしつこく誘ってきました。当時の僕は特に幽霊や心霊現象を信じていたわけではありませんが、興味本位で行ってみることにしました。
その晩、私たちは東京郊外にある古いトンネルに向かいました。そのトンネルは、かつて多くの事故が起こったことで有名で、多くの人がその中で命を落としたとされています。そのため、地元では「幽霊トンネル」として恐れられている場所でした。
車で1時間ほど走り、目的地に到着しました。周囲には街灯もなく、トンネルの暗闇は圧倒的でした。サトルは少し興奮した様子で、僕に手に持っていた懐中電灯を手渡しました。「行こうぜ、カズ!面白いことになるかもしれないぞ」と彼は言いました。
最初にトンネルに入った瞬間、ひんやりとした風が肌に刺さりました。中は湿気が多く、何とも言えない不気味な雰囲気が漂っていました。足音がトンネル内にこだまし、その音が異様に大きく聞こえました。進むにつれ、周囲の闇が深まり、懐中電灯の光だけが頼りになりました。
トンネルの中程まで来た時、突然サトルが私の腕を掴み、「あそこ、あそこ!」と叫びました。彼が指差す先には、何かがこちらを見ているようでした。正確には、「誰か」でした。影がゆらゆらと揺れているように見え、声にならない声が聞こえる気がしました。
その瞬間、全身に鳥肌が立ちました。恐怖で足がすくみ、動けなくなった私を見て、サトルは「ほら、大丈夫だから。行こう」と半ば強引に引っ張り、影の方に向かって歩き出しました。しかし、私の勘が知らせるものがありました。この先には行ってはいけない、戻らなければならない、と。
しかし、その次の瞬間、理解しがたい出来事が起きました。突然トンネルの中に冷たい風が吹き抜け、懐中電灯の光が一瞬消え、その場は完全な闇に包まれました。おまけに何かがすぐ背後にいる気配を感じたのです。振り返ってもそこには何もありませんが、確かに何かがいる、そう感じました。
その影響か、サトルは突然妙な動きを始めました。まるで何かに憑依されているかのような、ぎこちない動きでトンネルの奥に進もうとしています。「サトル!戻ろう!」と叫びましたが、彼の耳には届かないようでした。
なんとかして彼を止めようと背中を叩いた瞬間、彼は我に返ったようで、無言でその場に立ち止まりました。それから「ここはやばい、帰ろう」と言いました。私たちは言葉少なにその場を後にし、急いでトンネルを後にしました。
車に戻った私たちは、すぐにその場を離れたのですが、道中はお互いに無言でした。何を見たのか、何が起きたのか、言葉にするのが恐ろしかったのです。
その後、サトルも私も、その夜のことはあまり語ることがありませんでした。お互いに触れないようにしているうちに、徐々に日常に戻っていきました。でも、あの日トンネルで感じた異様な感覚と、目の前に現れた影のことを、一生忘れることができません。
あれから何年も経ちますが、夜道を歩くとき、特にトンネルのような場所に差し掛かると、心臓が高鳴ります。あの場所で感じた目に見えぬ何かが、もしかしたらまだそこにいて、誰かが来るのを待っているのではないか、そんな考えが頭をよぎるのです。しばらくはその場所には近づきたくありませんでしたし、誰にも勧めたくない場所として、心に深く刻み込まれています。
この体験談を読んでも、信じるか信じないかはあなた次第です。でも、もし興味本位で心霊スポットに行くことを考えているなら、一つだけ忠告しておきたいと思います。時には「見えないもの」に出会う覚悟を持ち、それを受け入れる心構えも必要なのです。