INT. 古びた民家 – 夜
静かな夜。月明かりが差し込む、埃まみれの古い和室。畳はすすけ、壁には歳月を感じさせるひび割れが走っている。
(カメラゆっくりと部屋の中をパンし、小さな祭壇に焦点が当たる。)
祭壇には古びた写真と、一つの黒い箱。そしてその前に座る若い女性、アヤ(25)。彼女は不安げに箱を見つめている。
アヤ: (小声で自分に言い聞かせるように)大丈夫、ただの箱だから…。
(アヤ、箱に手を伸ばし、ためらいながらも蓋を開ける。中にはくすんだ青い玉が一つ。)
アヤ: (驚いて)これは…何?
(カメラ、青い玉をクローズアップ。玉から淡い光が漏れ出る。)
INT. 同じ古びた民家 – 回想シーン
数十年前。同じ和室。若い女性、サクラ(20)が怯えた表情で同じ箱を祭壇の前に置く。周囲に祈るように手を合わせた老婦人、ヨシエ(65)。
ヨシエ: これが最後だよ、サクラ。二度とこんなことはしちゃいけない。
サクラ: (涙ながらに)ごめんなさい、おばあちゃん。でも、あの人を助けたかったの…。
ヨシエ: 真実の愛は、闇を招く力とは無縁だ。これで魂を鎮めるが、決して箱を開けてはならん。
(ヨシエ、封印の呪文を唱え始める。部屋全体が揺れる。)
INT. 古びた民家 – 現代に戻る
アヤ、玉を手に取り、その冷たさに身震いする。再び周囲を見渡す。
(突然、風が吹きすさび、部屋の中を駆け巡る。灯りが揺らぎ、何かの気配がする。)
アヤ: 誰かいるの?
(沈黙。遠くから微かに囁く声が聞こえてくる。)
囁く声: アヤ…アヤ…。
アヤ: (震えながら)なんなの?どうして私の名前を知ってるの?
(アヤ、立ち上がり、玉を元に戻そうとするが、手が不意に動かなくなる。)
INT. 古びた民家 – 回想シーン
サクラとヨシエのやり取りが続く。
サクラ: おばあちゃん、この玉は…。
ヨシエ: (厳かに)この玉は、私たちの始まりでもあり、終わりでもある。過去の罪を紐解く鍵じゃ。
サクラ: どういうこと?
ヨシエ: 一族にかけられた呪いから逃れる術だ。ただし、罪深い者が再び開けたとき、その者に呪いが襲いかかる。
INT. 古びた民家 – 現代に戻る
部屋が激しく揺れ、壁から絵が落ちる。青い玉が手から滑り落ち、床に転がる。
(その瞬間、アヤの目の前に亡霊のような姿、サクラが現れる。)
サクラ: (穏やかに)アヤ…。
アヤ: (後ずさる)あなた、誰?
サクラ: 私を怖がらないで、アヤ。私は祖母が言っていた、許されざる者の一人。
アヤ: (必死に理解しようとする)どうして私に?
サクラ: あなたは私の子孫。私の咲かせなかった希望を持つ者…。
(サクラ、視線を柔らかくし、青い玉を指さす。)
サクラ: この玉には、私たちの過去が刻まれている。あなたが呪いを解く鍵を持っている。
アヤ: どうすればいいの?
サクラ: 玉に宿る真実を知り、許しを乞うの。過去の因縁を断ち切るために。
(アヤ、青い玉をしっかりと握りしめる。)
再び、玉が光を放ち、部屋全体が眩しい光に包まれる。
INT. 古びた民家 – 照明が戻る
部屋は静寂を取り戻し、アヤひとりが佇む。玉は再び穏やかな輝きで手の中に。
(周囲を見渡し、玉を祭壇に戻す。)
アヤ: (静かに)これで、いいのかな…。
(静寂が続く中、アヤは深く息を吐く。)
FADE OUT.