町からほど遠い山奥に、○○村という名の集落があった。高い山々に囲まれたその地は、外界から隔絶された何か不思議な場所だった。ある日、町から訪れた青年、タカオは、その村の奇妙な風習に巻き込まれていくことになる。彼は、古い文献を調査するために村を訪れたのだが、予期せぬ出来事に出くわすことになる。
村に到着した日の夜、彼は宿に泊まることにした。宿の主人は穏やかな笑顔を浮かべて、「今夜は儀式の夜です。静かにしていた方がいいでしょう」と、一言だけ言った。それから、戸を閉じることを忘れずに、と念を押した。タカオは少し不安だったが、長旅の疲れから早々と床に就くことにした。
だが、深夜、○○の音に彼は目を覚ました。それは太鼓か何かの音のようで、どこか遠くから聞こえてくる。不気k供な音だったが、好奇心が勝ち、タカオは宿の窓から外を覗いた。村の中心にある広場に、人々の影が見えた。皆が一心に何かを祈っているようだった。
翌朝、タカオは村人たちにその音の正体を尋ねてみたが、誰も答えようとしない。みんな、ただにこりと笑って、答えをはぐらかすばかり。ますます怪しいと感じた彼は、○るを調査することに決めた。
その日の午後、彼は村の外れにある○っぱい森を歩き回った。森の中で、彼は一つの古い祠を見つける。祠はひどく○毀れており、その前には不思議な石の偶像が鎮座していた。何かから発せられる力によって、タカオは祠へと手を伸ばしかけたが、ふいに背後から声がした。「そこには触れない方がいい。」
振り返ると、老人が立っていた。彼は村の者とは違って、どこかよそよそしい雰囲気をまとっていた。老人は言った。「それは′里の神’のもの。そして里の神は、いつも見ている。」
増え続ける謎に、タカオは次第に恐怖を募らせる。彼は村の資料館へと足を運び、村の歴史を詳しく調べることにした。古い紙に記された文字は今にも消えそうだったが、しっかりと読んだ。その中には何か恐るべきことが書かれていた。この村では、定期的に「生け贄」を捧げる習慣があったらしい、それは′里の神’を鎮めるためだという。
生け贄。驚愕と恐怖に包まれたタカオは、これが今晩の儀式と関係していると悟った。彼はすぐにこの村を去ろうと決め、荷物をまとめて出発しようとした。だが、村の者たちは彼をじっと見ていた。不安を感じたタカオは、村の外にある古い道を辿ることにした。
しかし、∇うように道が消え、彼はまるで迷ってしまったような錯覚を抱く。不気味に感じた彼は、一心に山道を登ったが、○いても同じ場所に戻ってくる……。
その夜、降り始めた雨。ザーザーと降る雨音の中、あの○○い音がまた鳴り響き始めた。外を見ると、広場には再び人々が集まって何かを唱えている。そして、その中心には老人の姿があった。彼は何かを手に持っている。
それは大きな〆で覆われた何かだった。恐ろしい感情がタカオを襲った。すぐにその場から逃げ出そうとしたが、その瞬間、タカオは誰かに背中から抱きしめられるような冷たい感覚を覚えた。その手を振り払おうとするが、身体はびくともしなかった。
「帰すわけにはいかない。」
その声はまるで古い木々のざわめきのように聞こえた。振り返ると、祠の偶像がタカオを見下ろしているように感じたが、それは錯覚だと思いたかった。
翌朝、村にただよっていたのは静寂。そして、タカオの姿はもうそこにはなかった。村人たちは日常を取り戻し、何事もなかったかのように日々を過ごしている。
やがて、町からまた新たな訪問者がやってくる。しかし、誰も気づいていない。タカオが今も村のどこかから、不帰の念で村を見守っていることなど。
たいていの者は、それが「村の風習」だと片づけてしまうが、この地に根ざしたそれが、本当に何を意味するのか。誰も知ることはなかった。村の″秘密”を知ることって、なかった。