孤島の恐怖体験

閉鎖空間

私の名前は佐々木健太。これは私が実際に体験した、誰にも信じてもらえないような出来事です。聞いたところで、フィクションだろうと鼻で笑う人ばかりかもしれませんが、私はこの恐怖を誰かに伝えたかったのです。

それは、大学の友人たちと旅行に行ったときのことでした。私たちは夏休みの予定を立てて、孤島にある一軒家を借りて一週間過ごそうということになりました。この島は本土から船で約二時間、普段は誰も住んでいない無人島です。全員が日常の喧騒から離れ、自然の中でリフレッシュすることを望んでいました。

メンバーは私を含めて五人。友人の中村、田中、鈴木、そして女子として唯一参加した山田です。私たちはそれぞれの家から出発し、島への連絡船に乗り込みました。船が揺れる中、私たちはこれから始まる非日常の旅に胸を弾ませていました。港に到着すると、島には私たち以外の人影はなく、寂しさが漂っていましたが、その静けささえも新鮮に感じたのです。

島にあった一軒の洋館は思ったより古めかしく、塗装が剥がれかけた茶色の外壁が年月を感じさせました。しかし、中に入ると意外にも内装はきれいで、家具も揃っており、生活に必要なものは全て整っていました。唯一不便だったのは、島には携帯の電波が全く届かないことでした。しかし、私たちは都会を離れたくてここまで来たのです。通信がなくとも、これもまた一興とポジティブに捉えていました。

初日は買ってきた食材でバーベキューをし、大いに盛り上がり、夜遅くまで歓談しました。しかし、その夜からすべてが狂い始めました。

真夜中に目が覚めた私は、なぜか心臓が激しく鼓動しているのを感じました。風が強く、窓がガタガタと音を立てています。ふと、何かの気配を感じ、それがどこから来ているのか確かめようと立ち上がりました。すると、暗闇の中、階段の方からかすかに足音が聞こえてくるのです。その音は近づいたり、遠ざかったりを繰り返し、不規則なリズムで鳴り続けていました。

最初は、仲間の誰かがトイレでも行っているのかと思いましたが、あまりにも長い。誰一人として起き出してくる様子もない。この足音は決して友人のものではないという恐怖が急激に増していきました。しかし、布団に潜り込み、この状況が早く過ぎ去ってくれることをただ祈りました。

翌朝、リビングに集まったとき、何人か他の者も夜中の音を聞いたと言っていました。しかし、疲れていたせいだろうということで、その話はすぐに取り合ってもらえませんでした。私たちは予定通りに島内を散策し、海で遊んだりして楽しい時間を過ごしました。

次の晩、私たちはカードゲームをして夜を過ごしましたが、ふと気が付くと、誰もが時間をずっと気にしているようでした。時計を見ると、まだ日付が変わったばかりの時刻でしたが、昨晩の恐怖が再び訪れることを恐れ、なんとなく早めに就寝することにしました。

その夜、私は最悪の出来事を体験しました。布団に横になり、無理にでも眠ろうと努力していた矢先、急に部屋の電気がちらつき始め、全て消えてしまったのです。慌てて起き上がると、階段の方からはまたあの足音が響き渡っていました。先ほどよりもさらに大きく、そして明らかにこちらに近づいてきています。

私は恐怖に駆られ、仲間たちのいる部屋に駆け込みました。しかし、彼らもすでに不安そうな表情を浮かべていて、「音がする」と口々に言い合っています。どうにかこの状況を打破しようと、全員で意を決して階下に降りていきました。

ところが、階段を降りると、さらに異様な光景が目に飛び込んできました。玄関のドアが開け放たれ、その外には明らかに人影ではない何かが立ち尽くしていました。黒い影が揺らめくようにその場に佇んでいるのです。直感的に感じたこと―それはこの影がこの家にいてはならない存在であるということ。そして、その影が私たちを見つめているという恐怖。

私たちは誰一人動くことができずにいました。時間が止まったかのようなその瞬間、仲間の一人が勇気を振り絞り、壮絶な勢いでドアを閉めました。それと同時に、がさついた音とともに全てが静まり返りました。

何が起きたのか誰にも説明がつきませんが、私たちはすぐにその場を離れ、二度とその部屋には戻りたくないと非難しました。しかし、島にいる限りあの家から離れることはできません。携帯は圏外で助けを呼ぶこともできず、夜が明けるまで耐えるしか方法はありませんでした。

その後の数日間、私たちは全く眠れずに過ごしました。あの日以来、あの影を直接見ることはありませんでしたが、あの足音は夜毎に聞こえてきました。それが人間のものなのか、それとも全く異なる存在によるものなのか、私には未だに分かりません。ただ確実に言えるのは、私たちはあの日何か信じ難いものに遭遇してしまったということです。

ようやく一週間が経ち、私たちはこの島を後にすることとなりました。船が出発したとき、振り返った島にあの洋館が小さく見えましたが、その時もやはりあの影はあの場所に立ち尽くしていました。

これが、私が体験した恐怖の出来事です。一生忘れることはありませんし、二度とあの島を訪れることはないでしょう。もしこの話を信じてくれる人がいるのなら、こんな体験は他で終わらせたほうが良いのかもしれません。

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