不思議な村とぼくの冒険

風習

ぼくはおかあさんと一緒に、おばあちゃんの村にいくことになったんだよ。おばあちゃんはいつもやさしいし、おじいちゃんの話とかおもしろくしてくれるからたのしみだった。でもね、その村が遠いところにあって、車で長い時間かかるんだって。ぼく、車のなかでお昼寝もしたけど、やっぱりつかれちゃった。

村に着いたとき、おばあちゃんが出迎えてくれたよ。「ようこそ、よく来たね」といって、ぼくの頭をなでてくれた。おばあちゃんの手はあたたかくて、心がほっとした。それから古い大きな家に入って、いろいろお話をしたんだ。

その村は小さくて、家もあんまりないの。人もほとんどいなくてしずか。ぼくの住んでるところとはぜんぜんちがうんだ。なんだか、ここでは時間がゆっくりながれているみたい。

あるひ、村を探検したくて、ぼくはおかあさんに散歩にいくっていったんだ。「あんまり遠くに行かないでね」とおかあさんは心配そうにいってたけど、ぼくはだいじょうぶだよってうなずいた。道は細くて曲がりくねっていて、木や草がいっぱい生えてた。歩いていると、ふしぎな石のかたまりをみつけた。なんだろうと思ってちかづいてみたら、それは神さまののうはんばこだったって。おばあちゃんがあとでおしえてくれた。

ぼくはもう一度そのばしょにいってみたくなった。そのとき、となりの家のゆうたくんっていう男の子が声をかけてきたんだ。「あんまり近づかないほうがいいよ」って。「どうして?」ってきいたら、ゆうたくんは「それはおばあちゃんにきいて」って。そして、なんだかかなしい目をしてた。

家に帰ってから、おばあちゃんにそのことをきいてみた。「あれはね、昔からこの村には神さまが住んでいるっていうお話があるのよ。神さまは村を守ってくれるんだけど、そのかわりにひとつ、わけをすることがあるの。それをこの村の人たちは大切にしているの」と、にこりと笑った。ぼくはまだよくわからなかったけど、おばあちゃんがしんけんな顔をしてたから、もうそれ以上はきけなかったんだ。

夜になると、村のひとたちが集まって、何かおいわいをしていた。ぼくも行きたかったけど、おかあさんがおとこのひこのためのものだから、ぼくはまだ行けないっていうんだ。ぼく、ちょっと不満だったけど、おかあさんが「だいじょうぶ、おおきくなったらわかるから」っていったから、しぶしぶあきらめた。

そして、つぎのひ。村にさいごの日だったから、さいごによる探検をすることにしたんだ。でも、あまり明るくないし、しずかで少しこわくなってきた。そしたら、あの石のところで、ふしぎなことがあったんだよ。

白いきれいなかみさまみたいなひとが現れて、ぼくに「おまえはどうしてここに来たのか」ときいたんだ。ぼくは「ただ探検していたんだよ」ってこたえた。そしたら、そのひとはやさしく笑って「この村のひみつを知りたいのか」ときいた。ぼくはうなずいた。でもかみさまは「こどもにはむずかしいこと。いつかわかるときがくる」っていって、さようならしたんだ。

ぼくはそのことをおばあちゃんにもおかあさんにもいわなかった。なんとなく、なのだけど。村を出るときも、ゆうたくんがちょっとさびしそうに手をふってた。でもぼくも手を振ったんだ。きっとまた来るから、そのときは村のひみつも教えてくれるかなあって。

また村に行くひを楽しみにしながら、おばあちゃんに「ありがとう」っていって、車に乗ったよ。帰り道、おかあさんがぼくの頭をなでて、小さな声で「この村は不思議ね」ってつぶやいたのが、なんだか耳にのこった。おうちにかえってからも、その村のことをずっと考えちゃうんだ。

それから何日かすぎて、またおばあちゃんから手紙がとどいた。あの村にはまだいくつか秘密があるって。でも、それはいつかぼくが知るべきときがきたら教えてくれるっていうんだ。ぼくはそれがたのしみでもあり、ちょっとこわくもあり。

どうしてかというと、ぼくはあのかみさまがほんとうにそんざいするんだって、信じているからだよ。きっとそのとき、またかみさまに会えるんじゃないかなって。おばあちゃんのいう「村のひみつ」、それを知るときまで、大人になれるかなって考えながら、ぼくはすこしずつおおきくなっているんだろう。

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