[配信開始音]
「はい、みなさんこんばんは。今日はついに、何人もの肝試し挑戦者が二度と戻らなかったと言われる、あの禁忌の地にやってきました。ここはとある山奥にひっそりと佇む廃寺『蛇鎖寺(じゃくさじ)』。多くの地元の人々からは、永遠に封印されるべき場所とされています。さあ、いよいよその全貌を明らかにしていきましょう」
[足音が砂利を踏む音、風が木々を揺らす音]
「まずはこの参道を進んでいきます。見てください、すでに苔むした石段が続いていますね。今日はちょうど満月ということもあって、月明かりが何とも不気味にこの石段を照らしています。まるで我々を誘うかのように…」
[カメラが揺れる音、かさかさという葉音]
「この廃寺は昔、地元の名家が守護神として祀っていた場所でした。しかし、ある年、突如としてその名家が途絶えるとともに廃れたとのこと。その原因については誰もが語りたがらないようです。そのせいでしょうか。こうして階段を上るにつれ、周囲の音がどんどんと消えていくように感じます。まるで、我々が異界に誘われているかのような静けさです」
[寺の門が開くギギギという音、少しのぎいぎいという鴬張りの音]
「まさか、この門が開くなんて…見てください。まるで誰かがここを通れと言わんばかりです。中に入るのは少し躊躇われますが、視聴者のみなさんのために気を引き締めて進んでいきましょう」
[奥へ進む足音、風が強まる音]
「本堂に近づくにつれ、風がどんどん強まってきています。この地に伝わる伝承によれば、蛇の邪神『鎌神』が封じられているそうです。その神殿に近づくことで、何かしらの力が働いているのかもしれません」
[突然、ガラガラという大きな音]
「今、何かが崩れる音がしました! 皆さん…お、落ち着いてください。おそらく風のせい…でしょう。しかし、見逃さないでください、この本堂の入口に巨大な影のようなものが…現れています。誰かが私たちに近づいてくるのでしょうか」
[影が動くシャラシャラという音、地面に何かが這う音]
「影が…あっ、これは…蛇だ!巨大な蛇が出てきました!冗談ではなく本当です。まるで、この寺を守護しているように我々の進行を阻んでいる様子です。これはまさに禁忌の地と呼ばれる所以かもしれません」
[急に風が静まる音、木々のザワザワが止まる]
「今、風が完全に止まりました。そして何か、耳鳴りのような音が…確かに聞こえます。みんなも聞こえていますか? 僕だけじゃないですよね。この場所、何かがおかしい。やはり、ここは触れてはならない場なのかもしれません」
[カメラを下に向けると、無数の古い人形が足元に転がっている]
「うわっ、なんですかこれは…地面に無数の人形が転がっています。まるで人々の祈りの痕跡、あるいは生贄として捧げられたものかもしれません。実在した名家の人々の魂の一部なのでしょうか…」
[突然、カメラがピントを失い、映像が乱れる音]
「あ、カメラが…なんだか、何かがジャミングしてきているようです。そして、今、後ろで何か話し声のようなものが…。いや、まったく聞き取れない。何を言っているか分からないが、念仏のようにも聞こえる」
[ライトがちらつく音、ぞっとするほどの静けさと冷たさが周囲を包む]
「ライトまで…まさかこの場所、何かに呪われているのでしょうか。ただの古い寺ではない。そう感じます。誰かが我々に立ち去ることを促しているのかもしれません」
[振り返ると、門の前にまた巨大な影が]
「もう一度…あの影が! 皆さん、これ以上は危険です。慎重に引き返すべきです。ここが封じられるべき場所だとはっきり感じます。やはりこの地からは」
[ガサガサという葉擦れの音、そして、突然の黒い画面]
「いま…皆さんに伝えたいことがひとつだけあります。どうか、この場所に興味本位で入るのはやめてください。何かが確実に我々の存在を拒んでいます」
[配信終了音]
[静謐な余韻が残る、無音の画面が続いてから、強制終了の合図音]