禁断の神社と失われた探求者

霊場

久遠の彼方、この世の理(ことわり)を越えたる地に、触れてはならぬ霊場あり。此処ぞ、禁断の聖域、その名を呼ぶは叶わぬ場所なり。神秘のヴェールに包まれし古き神社、その境内(きょうだい)に一寸たりとも足を踏み入るべからず。

いにしへの刻(とき)より、幾度にわたり人の訪れし神社、今は荒れ果てし廃墟と化せり。獣さえも寄りつかぬ地にて、闇の帳(とばり)は常続く。朽ちたる社殿(やしろ)が黙然と佇む姿ぞ、見る者の魂を凍てつかせる。

ひとたび、教えに逆らいし者あり。名を問うは無用にて、その男こそ、禁忌を破れる者なり。彼、貪欲(どんよく)な眼差しを持ち、古に封じられし秘宝を探求せり。古文書にて知りし伝説、それが彼の運命を決せしを、知る由もなかりし。

この者、森の奥深くに入り、忌まわしき神社へと至る道を辿れり。其処には石畳(いしだたみ)の参道、苔むし崩れ去りし鳥居、静寂に包まれし佇まいあり。彼の歩を重ねるごとに、異界の息吹を感じしは否めず、ここは神の領域、聞き届けられぬべき声がささやける。

されど、彼、心の恐れを押さえ、さらに進みぬ。社殿に至りしとき、その眼に映りしは、異形なる御神体(ごしんたい)なり。人知を超えし荘厳(そうごん)、その周囲は暗にして、亀裂の如く、時空が歪むかの様相を呈す。

その一瞬、闇より無音の叫びが響き渡りし。己が意識が麻(あへ)ぐが故、此れは幻かと、疑念の闇に囚わるる。だが、何を観たのか、その記憶は遠のき、浮かび上がるは形なき恐怖ばかりなり。

儀式文の口寄せせんがため、彼は染めし呪具を取り出し、己が血を用い、禁忌の律法(りっぽう)を記せり。これぞ、契約を交わす儀、古よりの霊と語らうための道筋なり。彼の声は闇を切り裂き、隣次の言霊(ことだま)は織り成され、旋律となりて境界を超えけり。

「かかる地に霊ありて、眠りし魂よ、我が望むは真理の開示。この度、契約を交わしたもうと、何卒お聞き届け給え。」

しばしの静寂ののち、不気味なる気配は濃密となり、彼の背筋を這うような恐怖は、産まれし者の如く命を吹き込まれたり。霊たちは応え持つを、彼は知りたり。だが、その交わされし言葉の意味は、人知を超えし深淵を覗くが如し。

その夜、彼の目は決して開かれず、霧の中に消え失せたり。その翌日、村人らは彼を探し求めしかども、神社の境内には彼の痕跡なく、ただ風にそよぐ木々のみが囁く。

この物語、伝説として語り継がれり。故に、村人は口々に言う。あの地に近寄るべからず。名もなき神社、触れれば命の糸、容易に断たれるを心得よと。斯くして、現し世の彼方に鎮まりし神社、いまだに神秘のヴェールに包まれ続けたり。

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