これは実際に私が体験した、決して忘れることのできない恐ろしい出来事です。今でもその記憶は鮮明で、夜になると光景がまぶたの裏に浮かんできます。
私は大学生の頃、歴史を専攻していました。その時期に、大学の他の学生たちと共に、ある古い村を訪れる機会がありました。その村は、過去に大きな悲劇があった場所として知られており、隠された呪いの話が密かに囁かれていました。
村に着いた私たちは、地元の住民が案内するツアーに参加しました。案内してくれたのは、白髪の老人で、その村に長年住んでいると言いました。老人は興味深い歴史の話をたくさんしてくれましたが、その中でも特に気になったのが、村の中央にある古い神社の話でした。その神社は幾百年も前に建立され、何か恐ろしいものを封じ込めるために建てられたという伝説がありました。
ツアーの途中、私は好奇心に駆られ、他の学生たちが興味を示さなかったその神社を一人で訪れることにしました。神社は鬱蒼とした森の中にあり、まるで時間が止まっているかのような不思議な雰囲気を醸し出していました。社殿は朽ち果て、苔むした木々に囲まれていましたが、それでもどこか神聖な感じがする場所でした。
境内に足を踏み入れると、突然、ひんやりとした風が吹いてきて、背筋がゾクっとしました。しかし、その時はただの気のせいだろうと思い、祭壇の前に立ちました。その瞬間、鳥肌が立つような奇妙な感覚に襲われました。私の脳裏にフラッシュバックのように昔の光景が次々と浮かび上がり、まるで私自身が過去の出来事を体験しているかのようでした。
戻ってから数日後、私は体調を崩し始めました。最初はただの風邪だと思っていたのですが、どうにも治らない。不気味な夢を毎夜見て、夢の中では必ずあの神社が舞台でした。夢の中で私は何度も何度も神社の中を彷徨い、帰りたいのに帰れない感覚に囚われていました。
それだけではありませんでした。現実でも、私に不吉なことが起こり始めました。周囲の人々にも見えない「何か」の気配を感じるようになり、夜中に部屋の中で誰かが歩いている音を聞くこともありました。電灯が突然消えたり、テレビが勝手についたり消えたりすることも日常茶飯事でした。
どうすればいいのか分からず、一度だけ占い師のところに行きました。そこで言われたのは、「あなたは何か強力なものを呼び起こしました。それがあなたに取り憑いている」とのこと。私は愕然としました。あの神社に行った時、何か禁忌を犯してしまったのだと直感しました。
それからというもの、日に日に私の精神状態は悪化していきました。誰かが私を見張っている気がして、息苦しさを感じることが増えました。友人たちもそんな私の異変に気づき、心配してくれるのですが、どうにも怖がらせたくなかったので、詳しいことは話せませんでした。
結局、私は大学を休学し、実家に戻ることを決めました。少しでも気を紛らわすために場所を変えようと思ったのです。実家に戻ると、母が私の顔を見て何かを察したようで、「何かあったの?」と尋ねてきました。私は全てを話す勇気はなかったけれど、一部始終を打ち明けました。
驚いたことに、母は昔からそんな話を聞いていたらしく、「その神社は、行ってはいけないと子供の頃から言われていた」と教えてくれました。私がその話を聞いた時にはもう遅く、呪いが解けているとは思えませんでした。母は知り合いの霊媒師を紹介してくれると言い、私はその霊媒師の元へ行くことになりました。
霊媒師の女性は、神秘的な雰囲気を持つ人で、私の話をじっくりと聞いてくれました。そして、彼女は一言、「あなたの過去に原因がある」と告げました。私にとっては、何も思い当たる節がなく、ただただ混乱するばかりです。
その夜、再び夢を見ました。しかし、それは恐ろしい夢ではなく、親しみのある誰かが私を優しく抱きしめているものでした。翌朝、目が覚めた時、不思議と心の重荷が消え去っていることに気づきました。呪いは解けたのか、それとも一時的なものなのか分かりません。ただ、その後は二度とあの村に近づくことはしませんでした。
この体験以来、私は不思議な現象や場所には近寄らないと心に誓っています。そして、何より、過去の因縁や罪というものがどんな形で現れるか分からない恐ろしさを知りました。今でも、時折あの神社の夢を見ることがありますが、そのたびに恐れと共に、自分の中に残る何かを感じずにはいられません。