禁断の神社での恐怖体験

霊場

これは私が高校生の夏休みに体験した、今でも鮮明に心に残る恐怖の出来事についての話です。おそらく、あの時のことを誰に話したら信じてくれる人は少ないでしょう。しかし、それでも私はこの体験を誰かに知ってもらいたく、ここに記します。

その年の夏、私は友人たちと一緒に地元の山奥にある古い神社を訪れることにしました。あまり人が訪れることのない、古びた神社で、地元でも「触れてはならない聖域」として密かに恐れられている場所でした。もちろん大人たちはその神社について何も語りたがらず、訪れることを禁じていました。しかし、若さゆえの冒険心と好奇心に煽られ、私たちはあえてその禁忌に挑むことにしたのです。

その日、昼間のうちに山のふもとまで車を走らせ、そこからさらに小道を歩いて神社へと向かいました。道中は山道が続き、次第に生い茂る木々に囲まれ、薄暗くなっていく中、私たちは励まし合いながら歩き続けました。しばらくすると、古い石の鳥居が見えてきました。鳥居をくぐった瞬間、風が一瞬にして止まり、異様な空気が漂い始めます。普段は聞こえるはずの小鳥のさえずりさえも、ぴたりと止んでいました。

朽ち果てた社殿は、静寂の中にひっそりと佇んでいました。木々の間から漏れるわずかな日差しだけが、その場所を照らしていました。私たちは周囲を探検しながら、それぞれの思い思いに写真を撮ったり、スケッチをしていました。しかし、社殿の近くに足を運ぶと、急に冷たい風が吹き抜け、ゾクリと背筋が凍るような感覚に襲われました。まるで何かが私たちの行為を咎め、立ち退くように促しているかのようでした。

そのうちの一人、友人のタカシが、社殿の奥にあるという祭壇を見たいと言い出しました。私たちは少しためらいながらも、彼について行くことにしました。祭壇には、いくつものお供え物が放置され、どれも古く朽ちていました。何が捧げられていたのか判別できないほどに風化しています。タカシが祭壇に手を触れたその瞬間、社殿の中が俄かに薄暗くなり、不気味な冷気が漂いました。

急にタカシがうめき声をあげ、彼の表情が引きつりました。「何かが俺の中に入ってくる…」と彼は苦しそうに呟き、手を振り払おうと必死でした。しかし、私たちはどうすることもできず、ただ彼の叫びに耳を塞ぐしかありませんでした。突然、社殿の奥にあった大きな鏡が揺れ始め、鏡の中から白い手が何本も伸びてきました。それは私たちに向かって伸び、何かを求めようとしています。

恐怖に駆られた私たちは、一斉に逃げ出しました。後ろを振り返ると、社殿の入り口には白装束を纏った影が立ち、じっとこちらを睨んでいるように見えました。それは間違いなく、この地に縛られた何かであると直感しました。私たちはその場を全力で駆け抜け、荒い息をつきながら、やっとの思いで鳥居をくぐり抜けました。

山を下り、駅までの道を戻ると、日常の音と風景が蘇ってきましたが、私たちは誰一人口を開くことができませんでした。タカシも何とか無事でしたが、あの時のことを聞かれると表情を曇らせ、決して話そうとはしませんでした。私もそれ以上その話を蒸し返す勇気はなく、ただ心の中に封じ込めたままです。

その後、私たちはその神社について町の歴史に詳しい老人に話を聞く機会がありました。彼によれば、その神社はかつて災厄を払うために建立され、多くの不幸が重なった際に人々の心が離れ、いつしか廃れていったのだと言います。特に、あの場所で命を落とした者たちの無念が、今もそこに留まり続けているのだと。

触れてはならない聖域。本当にそうだったのです。あの出来事以来、私はあの神社へは二度と足を踏み入れることはありません。現実と非現実の狭間で起きた、あの時の恐怖は、決して消えることなく私の心に刻まれ続けています。あれ以来夜にふとあの影を思い出すと、またあの冷気が背筋を駆け抜けるのです。これは、私たちが越えてはならない一線を超えたことで受けた、報いの一部なのかもしれません。

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