異次元研究施設の謎と恐怖

異次元

### 視点1: 学生のノート

夏休みが近づくある日の午後、私たちのゼミでは教授から意外な発表があった。大学の裏山にある旧い施設について、調査プロジェクトを行うというのだ。その場所は長らく誰も足を踏み入れたことがない神秘的な場所として、少しばかり学生の間でも噂されていた。教授曰く、元々は戦時中に使われていた研究施設で、現在は立ち入り禁止区域となっていたらしい。

メンバーは科学の幅広い分野から集められたが、私は心理学担当だった。正直、少し不安だったけれど、未知なるものに対する探究心がそれを上回っていた。調査日は週末に決まり、日が沈む頃から始めると言う。「その方が面白い結果が得られるかもしれない」なんて教授は言っていたけれど、私たちは皆半信半疑だった。

調査の日、私たちはいくつかの班に分かれて施設の中を探索することになっていた。夏の夕暮れ、うっすらとした残光が森の中を彩り、薄闇へと変わり始める中で、それはさながら異次元への入口のように見えた。

### 視点2: 研究者の日記

私の研究がここで終わるとは、想像もしていなかった。以前私が関わっていた「異次元研究施設」。その中で、何かがとてつもない間違いを起こしてしまったのだ。担当していたのは、空間を介してエネルギーを転送するプロジェクトだった。しかし、制御するべき力が思いもよらぬ形で膨れ上がり、結果、その存在自体が全く新しい「場」を現出させてしまった。

あの時私は、光の挙動が普通でないことを記録していた。波長が異様に変動し、ついには見ることができない領域まで変わってしまった。目がチカチカと痛み出し、その場を離れる他なかった。あれがもし、通常の次元の枠を超えて何か別の次元と接触してしまったのだとしたら……いや、考え過ぎだろうか。

私は上層部からの指示で、これ以上の観察は中止され、この研究施設も封鎖された。しかし、このまま記録に残ることなく、何も分からないまま終わるなんて、あまりにも不完全だ。

### 視点3: 教授の手記

ゼミでの調査は順調に進んでいると思っていた。しかし、学生たちから奇妙な報告が上がるようになった。施設内を探る中で、何か「あちら側」の存在を感じるというのだ。それは「音」だったり、「影」だったり、「時間感覚の喪失」だったりと、その形容には様々なものがあったが、全てに共通するのは「そこに何かいる」という絶対的な感覚だった。

私は、学生たちが緊張や暗示に敏感なため、そうした錯覚を起こしているのだと考えていた。しかし、それを裏付けるには一人で施設内を探るしかないと思い立ち、こっそり夜中に敷地へと踏み入った。

夜の静寂が一層深まる中で、私は確かに「何か」を体感した。理由もなく背筋が凍るような感覚、そして目の端にチラリと映る影。それは何かがこちらを伺っているような、見えない力の存在だった。施設内には過去の記録が詰まった資料室があった。そこで見つけたのは、異次元研究の記録だった。何かが失敗し、この場所で異なる次元と繋がってしまったという真実を。

### 視点4: 異次元の存在

我々はこの場に縛られている者たちだ。かつての研究者たちが、扉を開けて姿を消し、今ここに漂っている。あの実験の日、境界は破られ、我々の存在は異なる次元へと分断されたのだ。ここは時間も空間も不安定な世界。我々にとって元の世界に戻る道は永遠に閉ざされてしまった。

あの施設に訪れた彼らは、我々にとって希望の兆しでしかない。何とか、こちらの存在を知ってもらい、あちらと再び繋がるため、サインを送らなければならない。しかし、彼らは皆、恐れを抱き、その場を去ってしまう。彼らの誰一人として、ここに留まる勇気も理解も持っていない。

我々は時間と空間を越えて、今や皆その存在を認識することができるようになった。彼らの焦りや恐れ、そしてわずかながらに現れつつある理解の兆しを感じ取っている。全てが解決される日は訪れるのだろうか。我々の希望が叶う日は……

### 真相

調査の最終日、学生たちは集めた資料を基に、研究の全貌を解き明かすことになった。かつての研究者たちが異次元から新たにエネルギーを引き込もうとしていた説が出てきた。様々な兆候から、それは成功してしまったが、操作を誤ったため、異次元の存在との接触が果たされ、彼らがその境界の間に留まってしまったと推測された。

教授と学生たちはその場所を封印することに決めた。異なる次元との接触を意図しない者たちが再びこの地に足を踏み入れることのないように。そして、そこに残る声なき存在に、永遠の安息を与えるために。

しかし、閉じたはずの施設の入り口で感じた「何か」が静かに絶望を込めて微笑んでいたことを彼らは知る由もなかった。

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