異次元廃墟の夢議

異次元

夢の中で私は大きな廃墟の中に立っていた。その場所はかつて人々で溢れかえっていたが、今ではただの記憶の欠片が残る静寂な場所になっていた。空は不気味な赤に染まり、見上げるだけで心の奥底から不安を掻き立てられる。私は廃墟の石畳を踏むが、足音は聞こえず、まるで私の存在が周囲に吸い込まれているかのよう感じた。誰かが見ている気配がするが、振り返ってもそこには誰もいなかった。

私はふらふらと足を進め、廃墟の中央部にある大きな広場にたどり着いた。そこには何か奇妙なものが立っていた。形容しがたい、不条理な存在のような彫刻。しかし、それを凝視するほどに同時に理解不能の魅力と恐怖に心が蝕まれていくのを感じた。その中心には一つの目があり、まばたきもせず見つめられている気がした。その視線は私の内面を射抜き、生の記憶と死の予感が交差する。震えながら目を逸らそうとするが、どうしても目が離せない。

次の瞬間、視界が突然切り替わった。私は今、異なる次元、異なる時空にいた。周囲には不規則に漂う光の粒が無数に浮かび、それが異なる色に変化し続けていた。空間全体が脈動し、その呼吸は私の心臓の鼓動と同期しているように思えた。耳の奥で奇妙な囁き声が聞こえ始めた。それは言葉にならない音で、直接脳に流れ込んでくる不快な波として響いた。

気がつくと、目の前には影のように揺れる何かが出現していた。漆黒の中に不定形な輪郭が震えており、見る者の心を試すかのように変幻自在に姿を変える。その存在は、私の意識の隅々に入り込み、自分が今どこにいるのかをかき乱した。夢中で背を向け、逃げようとするが、どこへ行っても景色は変わらず、同じ場所にいるように感じられた。

次第に廃墟の景色が再び視界に戻り、私は再びその広場に立っていた。しかし、何かが変わっている。空が青白く、異様に冷たくなり、建物の影がまるで生きているかのように動き始めた。それはまるで、私を呑み込もうとする存在の一部であるかのような意思を感じさせた。私は恐怖に駆られ、再び足を動かして逃れようとしたが、足はまるで粘着質の地面に引き留められているように重かった。

時間と空間が今にも崩れ落ちてしまいそうな感覚に襲われる。私は自分の存在そのものが彼らの意識の中に囚われていることを悟った。異次元から手を伸ばす者たちの視線が私の背中を這い回る。その意識を振り払おうとするが、彼らのささやきは次第に大きく、明瞭になり、言葉として私の思考に刻まれていく。

「あなたはもう戻れない」その声は私の運命を決定づける呪詛のようだった。私は眉間を押さえ、衝動的にその場から逃れるために目を閉じた。

突然、意識が戻り、自分が持っていたベッドに横たわっていることに気付いた。全身汗でびしょ濡れになり、胸が激しく高鳴っている。夢だ。今見たのは夢に違いない。しかし、その感触はあまりにも現実的で、今もなおあの異次元からの視線がどこかにあるように感じた。

時計を見て驚愕した。時間は見たこともない数字を指していた。その時、私はこの世界が狂ってしまったことを悟った。私はまだ夢の中にいる、もしくは既に異次元に取り込まれてしまっているのかもしれなかった。恐怖と絶望が渦巻く中、ただ目を開けたまま、再び眠ることができずに、吐息のような声を聞き続けるしかなかった。

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