田舎町の狂気と未解決の惨劇

猟奇

私は、かつて小さな田舎町で暮らしていた。その町は静かで、昼間は子供たちの遊ぶ声が聞こえ、夜になると蛙や虫の音が響く、平和そのものの場所だった。しかし、あるときから奇妙な出来事が起こり始め、町の穏やかな日常は徐々に壊れていった。

最初の異変は、町外れにある廃屋での出来事だった。廃屋は昔、地主が住んでいたらしいが、彼が一家心中を図ってから誰も住もうとはしなかった。ある日、地元の高校生が廃屋に肝試しに行ったが、そのうちの一人が戻ってこなかった。必死の捜索の末、彼の無惨な姿が発見された。顔は判別できないほどに潰され、全身は異様に捻じ曲げられていた。

警察は事件を徹底的に調査したが、犯人は見つからなかった。だんだんと噂が広がり、廃屋には何か邪悪なものが潜んでいるのではないかと囁かれ始めた。私は、それを単なる噂話だと思っていた。しかし、そのうちに自分自身が恐怖の中心に巻き込まれることになる。

ある晩、私は親友の健二と町を散歩していた。いつものように廃屋の前を通りかかったとき、彼が突如として何かに誘われるように屋敷の中に入って行った。私は慌てて追いかけた。廃屋に足を踏み入れると、空気は重く、湿気が肌に纏わりつくようだった。奥の部屋へと健二の姿が消え、その途端、ドアが音を立てて閉まった。

闇の中で声を上げる健二を探し、私は暗い廊下を進んだ。急いでいるはずなのに、その時間は永遠に続くかのように感じられた。突き当たりの部屋に足を踏み入れると、私はある光景に凍りついた。健二が天井から吊るされ、全身が切り刻まれ、真紅の液体が床に滴り落ちている。信じられない想いでその場に立ち尽くしていると、背後から低い笑い声が聞こえた。

振り向くとそこには、異様なまでに長身で痩せ細った男が立っていた。彼の目は異常に輝き、その狂気は肌に触れるように感じた。男はゆっくりとナイフを振り回し、私に向かって歩み寄る。恐怖で動けない私をじっと見つめながら、彼は小さな声で何かを呟いた。それはまるで、古い呪文のように耳に響き渡った。

奇妙なことに、その場から立ち去ることができず、私はただ見ていることしかできなかった。男は興奮に満ちた顔で私を見つめ、自らの狂気に浸っているようだった。その瞬間、頭の中でブザーが鳴り、我に返った私は全力で外に向かって走り出した。廃屋を飛び出した後も、追いかけてくる気配が背後に付きまとっている気がした。

その夜以来、町には奇怪な事件が続くようになり、数人の若者が同様の方法で命を絶たれた。警察は懸命に捜査を続けたが、犯人の手掛かりすら掴めなかった。それどころか、新たなアリバイが次第に謎を深めるばかりだった。ちょうどその頃から、町の住人の中には少しずつ精神に異常をきたす者が現れ始めた。

私はあの日の恐怖から逃れられず、強い不安感に苛まれ続けた。夜になるとあの男の笑い声が頭から離れず、誰かに見られているような錯覚に陥った。友人たちに相談してみたが、彼らもまた口を閉ざすようになり、次第に一人、また一人と姿を消していった。

その後、この不可思議な事件は長い間未解決のまま、私は町を離れる決心をした。町を去り、新しい生活を始めても心の片隅には恐怖が根を張り続けた。結局、あの狂気を宿した男は誰だったのか、何が彼をあそこまで凶暴にさせたのかはわからずじまいだった。しかし、今でも時折思い出すことがある。あの奇妙な土地と、そこで起きた惨劇を。そして、この体験が事実であるが故に、さらに逃れようのない恐怖に襲われることを。

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