消えた村の奇怪な謎

日常崩壊

私の故郷は、四方を山に囲まれた小さな村である。人口は減少の一途をたどっており、今では高齢者が多くを占める。日常生活は穏やかで、毎日がゆっくりと流れていた。そんな村で、私は最近起こった一連の出来事について記録を残すことにした。

最初に異変に気付いたのは、村の中心にある古びた神社だった。お盆の時期が近づくと、村の者は祭りの準備に取り掛かる。だが、その年は何かが違った。神社の鳥居の前に置かれた賽銭箱が、毎晩空になっているというのだ。村には若者どころか、小さな子供もほとんどいない。賽銭泥棒などあり得ない。初めてこの話を耳にしたとき、私は悪戯好きの狸が原因ではないかと軽く流していた。

しかし、次第に事態は深刻さを増していった。神社の次は、村の広場に置かれていた石像だ。夜を迎えるごとに、石像の位置が少しずつずれていることに村人たちが気付いた。それはまるで誰かが動かしているかのようだった。石像は非常に重いため、一人や二人では動かせるはずがない。村の議会では、誰かが意図的にそれを動かしているに違いないと議論が沸騰した。

調査のため、私はいくつかの仮説を立てて検証を始めた。一つ目は、地盤のゆるみが原因で石像が自然に動いているというもの。しかし、地質学者に確認したところ、その可能性は低いと判断された。次に考えたのは、近隣の動物たちの影響だ。しかし、石像が動いた後に残された跡を調べても、動物の足跡などは一切見当たらなかった。

その晩、私と数人の村人で神社のそばに見張りを立てることにした。深夜、村全体が静けさに包まれたころ、不意に風の音が変わったことに気付いた。高く乾燥した音が響き、それと同時に石像が急に重心を失い、横に倒れ込んだ。私たちは急いで駆け寄り、石像を起こそうとした。だが、その場には何の異変も見つからず、すべてが不可解だった。

その後も村の至るところで小さな出来事が続いた。井戸水が突然干からびたり、夜中に非常灯が点滅したりと、説明のつかない現象ばかりだ。私はこれらの出来事が何らかの関連性を持っていると推察した。だが、その具体的な結びつきは判断しかねる。

日々の調査が進む中で、私は村の古い記録に目を通すことにした。何か手掛かりになるものがあるかもしれないと思ったのだ。古文書には、この地に古代の祭祀跡があったという記述があり、そこには神々を迎える儀式が行われていたとの説が記されていた。村の祈りの場が特異な力を持っているとされ、それを敬わない者には災厄が訪れるという話もあった。

この文書を読んでからは、日常の光景すら歪んで見えるようになった。すべてが曖昧で、何が現実で何が幻覚なのかわからない。それでも、私はこれらの出来事を論理的に解明しようと努めた。だが、次第に私自身の記憶が曖昧になり始め、果たして自身の認識が正しいのかどうかさえ疑わしい。

ある夜、私の夢は村全体が奇妙な光に包まれるというものだった。目覚めたとき、夢で見た光景が現実のものとなっていた。村に漂う淡い光は、朝日に反射して消え、何事もなかったかのように日常が戻る。だが、この夜を境に私は神社の賽銭箱や石像の動きに関しては一切の興味を失った。

最後に起こった出来事は、私の想像を遥かに超えたものだった。村の消失である。朝起きると、確かにあったはずの村が消え失せ、広大な草原が広がっていた。私は一体どこにいるのかと混乱し、すべてを把握するまでには時間がかかった。村が消えた原因を論理的に説明することは私には不可能だった。

今でも村が存在していた証拠を探し続けている。だが、何度調べても手掛かりは何もない。記憶の中では、確かにそこに人々が生活し、互いに助け合い、笑い合っていた。しかし、すべては蜃気楼のように消え去ってしまった。私は村の消失を怪奇現象として研究し続けるが、果たしてこの真相にたどり着ける日は来るのだろうか。謎は深まるばかりであり、解明できない恐怖だけが私の心に残る。

タイトルとURLをコピーしました