[掲示板: 怖い体験を語り合うスレ]
1. 朝比奈: なんかさ、最近変なんだよね。
2. 日向: どしたの?
3. 朝比奈: 通勤路がね、なんか違うの。
4. 日向: まじか!?それ、どういうこと?
5. 朝比奈: いつも通ってる道なんだけどさ、一週間前くらいから、通り道にあったはずの店がなくなってたり、いつの間にか工事中のエリアになってたりするんだよ。
6. 橋本: お前疲れてんじゃないの?
7. 朝比奈: それがさ、最初はそう思ったんだけど、何回も確認してるうちに、本当に自分が知ってた景色じゃなくなってるんだよ!
8. 日向: え、それ怖くね? 他には?
9. 朝比奈: それだけじゃないんだ。駅に向かう途中で出会う人たち、毎日同じ時間に同じ場所で同じ人がいるんだ。最初は通勤だからって思ったけど、あまりにも同じでさ、不気味さを感じるんだよね。
10. 橋本: 君、ほんと疲れてるんじゃね?
11. 朝比奈: まぁそうかもね。でも最近、駅員が急に別の人に変わってたんだ。昨日まで違う人だったのに、なんか知らない顔の人が急にいるんだよ。
12. 日向: お前、ほんとは夢でも見てるんじゃないか?笑
13. 朝比奈: いいや、本当にあった話。しかもその新しい駅員、こっちをじーっと見てきたんだ。
14. 橋本: それはさすがに怖いな。実際に顔突き合わせてくるって、それなんか、ヤバい奴なんじゃね?
15. 朝比奈: そう思うだろ?だけど、それだけじゃ終わらないんだ。一昨日なんだけど、家に帰ったら、ポストに入ってた郵便物が全部誰宛かわからないものでさ。
16. 日向: 間違えて入ってたとか?
17. 朝比奈: いや、全部の手紙に自分の名前が書いてある。でも住所が微妙に違うんだよね。○○1丁目なのに、○○2丁目に書きかえられてるみたいな。
18. 橋本: それ、郵便局に確認したほうがいいんじゃない?
19. 朝比奈: うん、次の日に行ってみたらさ、「そんなはずはない。こちらでも確認して問題ない」って言われた。
20. 日向: お前、もしかしてパラレルワールドに迷い込んでるとか?笑
21. 朝比奈: いや、冗談抜きで毎日が少しずつ変わってく感じがするんだよね。
22. 橋本: 例えば?
23. 朝比奈: 職場に行くと、上司が別の部署に移動してるとか。今まで何年も働いてきた人たちが、何事も無かったかのようにいなくなってるんだ。
24. 日向: それ、本当にパラレルワールドじゃね?実際、周りの人はどうなの?
25. 朝比奈: 聞いてみても、「そんなことないよ」って言われるし、こっちがおかしいみたいに言われてさ。
26. 橋本: それ、なんか試されてるっぽくね?
27. 朝比奈: 試されてるかはともかく、最近はもっとひどくなってきてるんだ。この間、帰り道で見かけた車が、次の日は色が違ってたんだよ。絶対に同じナンバーなのに。
28. 日向: まあ、色が変わるってのは、そうそうありえないよな。
29. 朝比奈: しかも、最近は周りの人たちの顔がぼやけて見えるんだよ。
30. 橋本: それ、もう本格的にヤバいんじゃ?
31. 朝比奈: 医者に行こうかと思ってる。でも、何かもっと得体の知れないものを感じるんだ。
32. 日向: それ、もし本当におかしくなったら、早く誰かに助けを求めたほうがいいぞ。
33. 朝比奈: うん、ありがとう。何かあったらすぐに相談する。
34. 橋本: なんかあったら連絡してな。俺らもどうにか手伝う。
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その後、朝比奈の書き込みはぷつりと途絶えた。しばらく掲示板を覗いても何の反応もなく、他のメンバーたちも心配し始めた。
35. 日向: 朝比奈、どうした?
36. 橋本: 大丈夫か?
37. 不明なユーザー: 朝比奈という人間はこちらでは存在しない。
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掲示板に現れた正体不明のユーザーは、それが朝比奈に関わる最後のメッセージだった。その後も書き込みが増えることはなく、スレッドは徐々に下火になっていった。ただ、日向と橋本だけは、あの奇妙なメッセージに心が引っかかっていた。
38. 日向: 橋本、あれってなんだったんだろうな。
39. 橋本: わかんないけど、正直、不気味だったよな……
持ち物が微妙に変わっていく日々、知らない人の視線、そして自分自身が世界から消えてしまうような恐怖。それは、朝比奈の孤独な戦いであり、今もどこかで続いているのかもしれない。