消えた古書店と繰り返される悪夢

都市伝説

最近、僕の友人のAから聞いた話なんだけど、本当に怖くて背筋が寒くなった。Aが語ったところによると、これは彼の知人Bが体験した話らしい。Bは普段からそこまで怪談話に興味があるタイプじゃないし、嘘をつくような性格でもないから、余計に不気味に感じた。

Bは大学時代に地方の小さな町で一人暮らしをしていた。近くにはあまり娯楽もないところで、突然の転勤でそこに住むことになったらしい。ある日、Bは仕事帰りに街の商店街を歩いていた。しばらく歩いていると、商店街の端にひっそりと佇む小さな古書店を見つけた。趣のある外観が気に入って、Bはふらっと立ち寄ることにした。

店内に入ると、思ったよりも広く、古びた香りが漂っていた。店主は小柄で、年老いた女性だった。彼女は穏やかな笑顔で出迎えてくれた。Bは棚を見渡し、特に買うつもりもなかったが、気になる本を手に取り、ちょっと立ち読みを始めた。その時、不意に背後から声がした。「その本、お好きですか?」

振り返ると、先ほどの店主がBの肩越しに覗き込んでいた。特に興味があるわけではなかったが、「まあ、ちょっと気になったので」とBは応じた。店主はにっこりと笑い、「それは良い選択ですね。ところで、この町であまり遅くまで歩かないほうがいいですよ」と忠告してきた。特に深い意味も感じなかったBは「ありがとうございます」と返事をし、数冊の本を買って店を出た。

その日から奇妙なことが起こり始めた。Bは夜中に不気味な夢を見るようになったのだ。その夢は、彼が薄暗い商店街を一人で歩いているシーンから始まる。周囲は静まり返り、どこか現実離れした感覚になる。夢の中の商店街は異様に長く、出口が見えない。気がつくと、後ろから誰かに追われているのを感じ、足音が迫ってきているのが分かる。その足音がどんどん近づいてくると、Bは恐怖で目が覚めるのだ。

最初はただの悪夢だと思っていたBだったが、これが何度も繰り返されると不安になった。さらに奇妙なことに、夢の中で着ていた服が現実でも同じ日に着ていることが多かった。まるで夢と現実がリンクしているかのような感覚だった。何度も見る夢に疲れたBは、夢の意味を解明したいと思うようになった。

ある日、Bは念のためにあの古書店にもう一度行ってみることにした。しかし、いくら商店街を探してもその古書店は見つからなかった。あの場所には何もない、ただの一角が広がっているだけだった。確かにその場所に店があったはずなのに、まるで最初から存在しなかったかのように消えていた。

不気味さを感じたBは、近くに住む地元の人に話を聞いてみた。すると、驚くべきことに、Bが見た古書店にまつわる話があると言う。なんでも、数十年前、その場所には実際に小さな古書店があったのだが、ある日突然姿を消したらしい。店主が急死した後のことだったそうだ。それ以来、その場所には何もできず、時折幽霊が出ると噂されているという。

この話を聞いたBはぞっとし、それ以降夢に出てくる商店街を歩くことに不気味さを感じるようになった。特に夢の中で感じる足音の主が誰かというのが気になって仕方なかった。それから、Bは夜遅くに出歩かないように心がけ、夢について深く考えないようにした。

そのおかげか、だんだんと夢を見なくなったBだったが、今でもふとあの古書店の夢を思い出すことがあるという。そして、話を聞いた僕も、その商店街の方向に行くたびに妙に背筋が寒くなり、無意識に足を早めてしまうようになった。それ以来、あの商店街には近づかないようにしている。誰も本当のところは分からない。ただ、あれが本当にBの単なる幻覚だったのか、何か過去の出来事と繋がっていたのか、いまだに謎のままだ。

僕はこの話を、決して作り話だとは思えない。Bは今でもあの出来事をはっきりと覚えているし、実際に何度も同じ夢を見たことは確かだと言っている。だから、皆さんも街を歩くときには、いつもと違って妙に不安な感じがしたら、注意したほうがいいかもしれない。どんな小さな陰でも、そこには何かが潜んでいるかもしれないのだから。

タイトルとURLをコピーしました