忘れ去られた文明の呪いと運命の螺旋

呪い

それは遥か彼方の時代、忘れ去られた文明の更に彼方より語られる。叡智を極めし人々は、その知識の代償として、恐怖の呪いを秘めた契約を巻物に刻み、己が後の世へと遺した。巻物は人々の手から手へ渡り歩くも、悪寒の予感に止むことを知らぬ。

その古き契約に触れた者は、必滅の運命より逃れ難し。

それは、かつてこの地にて栄華を誇った王の筆跡。人々は彼を神の使徒と称え、彼の息遣いは天の示す言葉と信じられた。しかしながら、王は無垢の者を欺き、その栄光を我が物とせんと欲した。そして、その罪深き望みの果てに、彼は闇の影を忍び寄らせた。

時を経て、巻物は忘れ去られた地に沈み、静寂の中に永い眠りを迎えていた。だが、神の叡智に魅せられた者が現世に再び姿を現した時、如何なる破滅が待ち受けることか、知る者はなかった。

かの地に赴いた一若者、名を高山と申す者あり。彼は学究の徒として、廃墟に眠る過去の叡智を求め旅を続けていた。ある日、彼は忘れられし洞窟の奥深く、古ぼけた巻物を見つけ出す。この巻物に込められた謎を解き明かすことで、自らの名声を高めんと、若者の胸に燃える野心は、既に不可逆の運命への第一歩を刻んでいた。

その巻物には、古代の文字が細やかに刻まれ、秘められた力の断片が記されているようであった。高山はその謎を解くため、書物を紐解き、考えを巡らせた。しかし、そこに記された文は人智を超えし存在の敬いと恐れ、そして忘れ去られるはずの闇の契約を語るものであった。

月は夜毎に欠け始め、高山が巻物に触れて以来、彼の周囲に奇妙な出来事が増え始める。彼の夢には、影が蠢き、太古の姿をした者たちが語りかける。彼等の言葉は脳裏に残響し、逃れぬ恐怖の底へと誘う。

それは警告の有無を超え、脅威は現世の中に姿を現さんとしていた。巻物の力を解き放った瞬間、長き封印は破られる。王の罪深き契約は再び継承され、高山はその呪いの渦中にあり。

古の時代、王は神を欺き鳴動の光を手にした。そしてその力を試みるべく、不死の命を望む背信に手を染めた。しかし、神の怒りは烈火の如く降り注ぎ、彼の願いは反転し、呪いとして降りかかる。背負う罪の重さに、王国は闇に飲まれ、其処に在るは終焉の黙示録。栄華を極めた国は一陣の風に散り、悲劇とともに埋もれた。

そして、その光景はその後の時代をも象徴した。

時が廻ると共に、高山の心に巣食った呪いは、更に強まる。彼の耳には、ざわつく亡者の囁きが絶えぬ。形無き苦痛が心身を蝕み、彼のとる振る舞いは狂気の淵を覗くものとなった。

心の奥底に封じた恐怖は、現実と幻想を曖昧にし、次第に彼の意識は儚き絆さえも壊し始めた。彼は異端の存在に抗おうとするも、その努力は空しく、破滅の足音はなおも高まる。

ついに彼はある夜、廃墟にて命を絶つ決意を告げる。彼が到達せんとしたのは、呪いの起点となる場所、巻物との再会地点であった。生者の足取りを止め、彼の焦点は再び回帰を成すべく古代の痕跡に目を向ける。

無数の影が息を潜め、巻物は再度彼の前に現れる。高山は膝をつき、彼の言の葉に心を捧げる。罪深き契約者を覆い尽くす暗黒は、彼の存在を取り込み呪いの系譜は終焉を迎える。

かくて、人智の逼迫を忘却し得ぬ坩堝の中、黙示録は再び閉じられた。

幾多の時代を越えて、呪いという名に秘密を隠し、巻物は再び眠りにつく。しかし、人はまた神秘を求めて騒乱を望む。永劫の時の中、契約は再生の息吹を待ち続ける。

全ての事象は巡り廻り、運命の螺旋を形作る。これは無限の秩序の一環に過ぎず、この物語は終わることなく次なる賢者を待ち侘びる。

人の知るべきことは、神は不変にして不意なる恐怖をもたらし続けること。過去の罪は影を落とし、因果は断たれること無く、未だ知られぬ誰かを呼んでいる。悠久の流れに沈み、決して静まりを知らぬ古の啓示は、今も人類の隙間に巣食っているのであった。

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