あらまし、この世にては現代のもと、奇妙なる出来事の数々あり。されど、ひとつの物語を伝えんとす。この物語に登場するは、名も知れぬ一人の若者なり。彼の名をただ「A」と称せん。
A、されば日々を忙しく送りつつ、あるアプリを携えて過ごしき。これなるアプリは、無数の人と繋がりを持ち、知らぬ顔とも会話を交わすことを許すものなりき。日毎、Aはこの虚空の世界にて多くの声を聞き、声を発しき。
ある日、一つの奇妙なるメッセージを受け取りたる。このメッセージ、初めて見るアカウントより発せられしものにて、ことよろしも内容を記さん。曰く、「汝が見るは夢なるか、現なるか」と。A、これを一笑に付さんとすれども、何ぞ心の内にざわめきの生まれけり。
日を追うごとに、メッセージは頻繁に届きたり。そのたびに文面は不可思議にして、古代の呪文の如し彼に読まれぬものなりき。「庭の影色変わりて、月の導くは汝の運命」と。A、混乱と関心に囚われつつも、返答を試みけり。
「汝は誰ぞや？」と打てば、即ち返答ありき。しかし、その返答たるや「名を問うなかれ、声と影の狭間にしるべを見つけん」でありぬ。日々、影は重く増し、Aの心に不安の種を撒きしかば、眠れぬ夜を数えぬまま過ごしたり。
社会を見るれば、すべての者がこのネットの海にて紐づき、情報の奔流に飲まれつつあり。この群集の中に、Aのみが異様なる存在を感ずることに、何ぞ意味あるかと悩めり。
ある宵、Aはふと一つの気付きを見出したり。メッセージに含まれる数々の文言、ある地点を指し示すことを。恐れつつも、何ぞ引き寄せられるよう、彼はその地を訪れたり。
場所に至りて、Aの目の前に広がるは、一つの古びた神社。時の流れに忘れられし静寂の中、彼は一人佇みつ。月光に照らされ、影は更に深く伸び、彼の足元を絡みつくが如し。
神社の中へと踏み入れたる彼は、薄暗がりの中で、朽ちた御神体に向かいて古代の文字を刻み見たり。その文字、彼が受けしメッセージと同じ様式にて書かれたり。その瞬間、彼の背後より一つの声が届きたり。
「時の声、影の語り、導かるは瞳を持つものなり」と。Aはその場より振り向けど、人影見出すこと叶わず。されど、その声の響きは、彼の心奥深くに残りたり。
その夜より、Aの周囲に不気味なる現象多く起こり始めたり。姿なき足音、夜毎に窓を叩く不意の風音、かつて知りえざる視線の奔流なり。
A、己が日常を侵され、この恐怖に終わりは無きやと問いしつ。彼は再び、あの神社へと赴かんと図りたり。されど、二度目の訪問時、神社は姿を消せり。彼の記憶の中にのみ残りし存在となりにき。
次に目覚めし時、彼の手元には一つの紙切れあり。そこには、またも古代の文字が踊りたり。「綾なす糸に迷いし人よ、声を聞け、道を開け」と。A、これに事の意味を考えつつも、彼の胸には常に一抹の不安が染み込みぬ。
誰しもが巻き込まれうるであろう、目に見えぬ恐怖たちの物語。これにて終わらんとす。影と声の狭間にて、日々の異界を彷徨う我、今に至りて未だ真相を知らざる。しなれば、この物語を聞きて、君には何ぞ思い浮かぶことありや。
