廃神社での異次元体験

異次元

高校の夏休みも終盤に差し掛かり、僕は地元の友人であるカズオと一緒に、ある企画を立てた。僕たちは、地元の山奥にある古い廃神社を探索することにした。その場所は、地元の間では「行ってはいけない場所」として知られており、多くの噂が飛び交っていた。しかし、その神社が本当にすごい心霊スポットなのか、それとも単なる昔話のたぐいなのか、僕たちは確かめたくなったのだ。

夜の19時、僕たちはバックパックに懐中電灯やカメラ、飲み物を詰め込み、歩いてその神社へと向かった。神社までは徒歩で約1時間。山道を進むにつれ、次第に木々は深く生い茂り、月の光さえ届かないくらいになる。その道すがら、僕たちは軽く話をしながら、少しずつ緊張を和らげていった。

ようやく神社に着くと、そこには大きな鳥居が待ち構えていた。表面は苔に覆われ、朱色であったはずの木材も年月を経て剥げてしまっている。僕たちが鳥居をくぐった瞬間、空気が一変したように感じた。何かがじっと見つめているような、息苦しい静けさが辺りを包み込んでいたのだ。

神社の拝殿は完全に崩れ落ち、本来の姿はもう分からなくなっていた。周囲にはお社の残骸のみが散らばっている。僕たちはそれを写し取ろうと、カメラのシャッターを次々と切った。すると突然、何の前触れもなく強風が吹き荒れ、僕たちの周囲の葉や小枝が激しく舞い上がった。

「なんだ、今の風?」カズオが怪訝そうに言った。その時、僕は何気なく撮った写真の一枚に目を留めた。画面の中には、人影が映り込んでいる。しかし、それはどう考えても人の形をしていなかった。あまりにも異様なその形に、僕は言葉を失って立ち尽くした。

「見てくれ、これ」と僕はカズオにスマホを見せた。彼の顔も瞬時に青ざめ、その場で言葉を失った。その影のようなものは形を変え、見る間に違う物体へと変貌し続けていたのだ。そして、その背後には、確かに人間の顔らしきものが一瞬だけ見えた。

「帰ろう、もうここにはいられない」カズオは震える声で言った。しかし足が動かない。まるで地面に縛りつけられたかのような感覚があり、そこから逃げ出すことができなかった。恐怖という不気味な力が僕たちをその場に押し留めていた。だが、それはまるで異次元の存在が僕たちを試しているかのようでもあった。

そして、何とも言えないヴィジョンが僕たちの目の前に展開された。幾重にも重なった映像の中で、見たこともない世界が垣間見えた。そこにはまるで存在しないはずの風景や、見たことのない生物たちが疾走していた。僕たちの理解を超えたヴィジョンは、次第に現実感を失わせていった。

恐怖は頂点に達し、僕たちは叫びながらそれを振り払おうとした。気がつけば僕は地面にうずくまり、冷や汗を流しながら震えていた。そして、いつの間にかその光景は消え、静寂が戻ってきていたのだ。

「ここにいちゃいけない」とカズオは言い、再び立ち上がると僕の手を引いた。僕たちはなんとか立ち上がり、その神社から離れ始めた。しかし戻る道のりは、まるで底知れぬ奈落を進んでいるような気さえした。その感覚の中で、僕たちは何とか一歩一歩を確実に踏み進め、山道を下り終えたのだった。

市街地に戻った僕たちは、心の底から解放された気分になった。同時に、あの神社で目の当たりにしたことは一体何だったのか。それは何度も話し合ったが結局答えは出ないままだった。あの現象は、ただの幻覚や錯覚では片付けられない、もっと異次元的な何かだったようにしか思えなかったのだ。

それ以来、僕たちは二度とその場所に近づこうとはしなかったし、あれ以上に恐ろしい体験は一度もしていない。だが、あの時を思い出すたびに、僕は胸の奥底で理解し得ない存在の息を感じ続けている。あの異次元は、きっと今もなおその場所で息づいているのだろう。

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