**調査報告書**
件名: 山中集落における失踪事件に関する調査報告
調査日: 20XX年8月15日
調査員: 田中 一郎(刑事局調査官)
背景:
本調査は、山中の小規模集落における連続失踪事件の解明を目的として行われた。当該集落は、山間部に位置し、人口は約50名。交通の便が悪く、外界からのアクセスは限定的である。被害者は全て集落の住民であり、過去5年間で計12名が失踪している。失踪に関する共通点として、被害者は全て夜間に集落内で行方不明となっており、特定の理由やパターンが確認されていない。
調査経過:
20XX年8月10日、調査員は集落に赴き、関係者及び住民への聞き取り調査を開始。現地では住民らによる異常な恐怖心が確認された。多くの住民が「ヤマノカミ(山の神)」による祟りと信じ、夜間の外出を極端に避けている。調査開始初日より、事件解決に向けた協力は得難い状況であった。
調査中には、以下の重点項目に基づく情報収集を行った。
1. 被害者プロフィールの比較
2. 目撃証言及び噂の収集
3. 周辺地域の地理的な確認
1. 被害者プロフィールの比較
年齢、性別、職業などのデータを集積したが、特筆すべき共通項は見られない。失踪時刻は共通して夜間19時から22時の間であることが確認された。被害者の社会的な関連性についても、集落内の基本的人間関係以上の特段の関係は存在しない。
2. 目撃証言及び噂の収集
聞き取り調査により、ある特定の証言が複数の住民から得られた。失踪現場付近では「異様な静けさ」が感じられることが頻繁に言及された。さらに、失踪した日の夜には「白い影」が集落内を動くという噂があり、実際に目撃した住民によるとその影は「人のようで人ではない」ものであると語られた。
3. 周辺地域の地理的確認
集落周辺は密林で囲まれ、迷いやすい地形である。集落を囲むように存在する小川を越えると、不意に広がる平坦な土地があり、そこで捜索活動が繰り返されたが、未だに手がかりは発見されていない。この空間こそが異様な静けさを醸し出していると述べる者が数名いた。
8月12日、調査は決定的な局面を迎えた。当夜、私は集落の巡回中に突如として落雷に見舞われ、外の状況確認を余儀なくされた。フィールドノートにはその時刻が21時43分と記録されている。突如、集落の外れから聞こえる微かな呼吸音に気付いた。人影を目撃し、声をかけようとした瞬間、影は視界から消失。この「白い影」が失踪事件の核心に関わると確信し、翌日再度の捜索を決意した。
翌日未明から、数名の地元民の協力を得て同地域を詳細に踏査。その際、立ち入ることを禁じられている神社の背後、林の奥深くに人の手が入った形跡が発見された。草が不自然に踏み荒らされ、地上には得体の知れない図形が描かれていた。詳細な分析のため、都市部の専門機関に土壌サンプル及び図形の写真を送付。
結論:
現時点で「白い影」の正体、及び集落における失踪事件の直接的な原因は特定できず。しかし、集落周辺の地理的環境、及び住民らの証言からは、何かしらの異常要素が介在している可能性を否定できない。専門機関の分析結果を待ち、調査継続が必要であると判断される。
以上