山奥のキャンプで遭遇した恐怖の白い目

猟奇

これはもう何年も前のことだが、未だに夢に出てくる。あの時の恐怖は、今でも心の奥底で静かにうごめいている。だからこそ、こうして誰かに話しておかなければならないと思うのだ。

その夏、私は大学の友人たちと共に田舎の山奥へキャンプに出かけた。参加メンバーは、いつも一緒にいる気心知れた仲間たちで、夏の間に忘れられない思い出を作ろうという計画だった。場所は、片道4時間ほどかかる山中の小さな村で、そこでキャンプをすることになっていた。村には古い民家が数件あるだけで、夜ともなれば街灯すらなく、星明かりだけが頼りだった。

夕方に到着し、早速テントを張った。我々は、早速焚き火を囲んでバーベキューを楽しみ、地元の人々に教えてもらった現地の怪談話で盛り上がった。その時は、考えもしなかった。これが、後に我々に降りかかる恐怖の前触れだったのだということを。

夜が更けると、睡眠を取るためそれぞれのテントに戻った。寝ようとした時、テントの外から人の気配を感じた。持ち前の好奇心が悪い方向に働いてしまったのだろう。私は静かにテントのジッパーを開けた。すると、そこには村の住人と思われる男が立っていた。

その男は、不気味なほど静かに佇んでおり、暗闇の中でその顔は見えなかった。ただ白目だけが光って見えた。背筋が凍る思いをした。声をかけようとしたが、声が出ない。その時、男はゆっくりと踵を返し、森の中へ消えて行った。

翌朝、仲間たちにこのことを話すと、誰もが笑って「夢でも見たんじゃないか」と言った。確かに、自分でも夢だったのかもしれないと言い聞かせようとしたが、あの白目がどうしても現実のものに思えてならなかった。

それから数日、何事もなく過ぎていった。あの出来事を除けば、全ては順調だった。しかし、キャンプ最終日の夜が近づくに連れ、不安が心を覆うようになった。そして、ついにその夜がやってきた。

深夜、またあの気配を感じた。次第に近づいてくる足音、森の不気味な鳴き声、そして何よりも体全体が寒気に襲われた。鼓動が早くなる。どうしても我慢できず、テントをそっと開けた。しかし、今回は仲間たちを起こしておくべきだと、後悔することになる。

外は異様なくらいに静まり返っていた。しかし、見渡す限り人影はない。ただその時、私の耳にかすかな音が届いた。それは、草むらを踏みしだく音、近づいてくる足音だった。一瞬、誰かが冗談でもしているのかと思ったが、その音はどんどん近づいてくる。私は、恐怖心を押し殺し、その場に留まった。すると、闇の中から再び白目だけが浮き上がるように見えた。

自分が動けると思った瞬間には、すでにテントのファスナーを引き上げ、仲間たちを揺さぶっていた。皆まだ眠りの中だ。「外にいる、何かがいる!」私は必死で訴えた。最初ははた迷惑そうな顔をしていた彼らも、私の様子がただならぬものを感じ取ったらしく、驚いて目を覚ました。

皆が外に出、辺りを見回すが、男はもういなくなっていた。しかし、私たちはその場に立ち尽くし、誰もが息を飲んでいた。村の住人かどうかは分からない。だが、その正体が何であれ、意図的に我々を観察しているのは確かだった。

我々は急いでキャンプを撤収し、予定よりも早くその地を離れることにした。車に乗り込み村を出るまでは、何も話さずにいた。その白い目の男が追ってくるのでは、という恐怖心が胸を締め付けたからだ。無事に村を離れてから、やっと全員が息をつくことができた。

それでも、都市に戻った後もあの白い目が頭から離れなかった。夜眠りにつこうとするたびに蘇るあの背筋が凍る感覚。そして数日後、ニュースを見た時、全てが終わったわけではないと知った。

その村の近くで、いくつかの死体が発見されたという。全ての被害者はキャンプに来ていた若者ばかりだった。警察は、何らかの猟奇殺人として捜査を進めているようだった。だが、私はすぐにあの白い目の男を、その犯人だと直感的に感じた。

それ以降、田舎の奥深くには絶対に踏み込まないことに決めた。忘れられない経験は、人を二度と同じ場所へは行かせなくするものだ。闇の中で輝く白い目は、私の心に悪夢として今も残っている。あの村で何が起きたのか、私たちが何に出会ったのか、その答えを永遠に知ることはないだろう。だが、唯一感じ取れることがある。それは、あの男が人間の姿をしていたであろう何かであるということ。そして、それは決して知りたくない真実なのだ。

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