依古ノ時、ある孤島ニテ、四ツノ魂集イ、閉鎖ノ館ニ籠ル。此ノ館、不気味ナリシ影ヲ孕ミ、開カズノ扉ヲ蔵ス。蒼キ霧ノ掛カル日、鳥モ虫モ声ヲ潜メ、彼等ハ未知ノ謎ヲ解カンガタメ、館ニ入リヌ。
館ノ扉一度閉ズレバ、外ノ声響カズ、内ノ声モ届カズ。彼等ハ檻ノ如ク閉ジ込メラレタリ。小サキ窓ノ向コウハ黒雲垂レ籠メ、太陽ノ光モ隔絶セリ。館ノ中、廊下長ク、扉無数ニ並ビ、何レモ同ジ意志ヲ持チ、訪レシ者ヲ惑ワサントス。
「門ノ向コウニ何アラン」と、先ニ進ミシ者ノ声、重キ石擬キニ響ク。同行ノ者、無言ニテ後ヲ追ウ。彼等一行、四方ヨリ迫リ来ム闇ニ怯エ、足ドリヲ早メヌ。何故ナラバ、暗キ影、去ラズ彼等ヲ見守リ、進ミ行ク度ニ応ジテ微笑ムが故ニ。
諸行ノ間、汝ノ心ニ不安ノ闇ヲ植エ、恐怖ガ種トナリテ芽ヲ出ス。「此処ニ在リテ我等ノ魂滅ビ行クヤ？」ト嘆クモ虚シ。
彼等ノ一人、名ヲ悲音トイフ者、扉ヲ開ケンと試ムレド、扉ハ動カズ。「運命ノ強キ鎖ニ捉エラレシ此ノ館ニ属シ」ト、声ナキ声ガ囁ク。彼乃チ門前ニ討チ伏シ、力尽キヌ。
館ノ中、時ノ刻ム音モ止ミ、時空ノ律ノ外ニ出デテ、霊界ト現世、交差ス地ト為リ果ツ。彼等ノ意識ヲ惑ワシ、虚ト実トヲ曖昧ニスル。霊ノ住マウ此ノ地ニテ、彼等ハ道無キ道ヲ行カウト試ムル。
次ニ、恐ロシキ影、静カニ近寄リ、残リシ者ニ囁ク。「汝ノ欲シキモノ、此ノ館ニ隠レ居リ」ト。希望ノ灯ヲ点スコトナク、虚しノ安息ヲ誘フ。残リノ者、影ノ封スルモノヲ探リ求ムレバ、闇ノ深淵ニ飲ミ込マレ、戻ル術無クス。
灰色ノ霧ノ中、影ノ囁キハ増エ、魂ヲ奪ワントスル欲望ニ歪ム。「此ノ館ノ主ト成レ」ト、永遠ノ時ニ囚ワルダケノ運命ヲ課ス。
残ルハ、静写ノ凝視スル虚ノ世界ニ捕エラレシ者達ノ幻影ナリ。「館ヨリ逃ルル途無ク、此ノ館ガ命ノ否カヲ問フ」者、遂ニ滅ビノ呪ヲ囁クトス。ソノ声、空間ヲ行キ渡リ、未来永劫、哀愁ノ旋律ヲ奏デン。
彼等ノ存在、今ヤ霧ノ虚無ニ呑マレ、時折現世ニ揺ラグ影トナリテ映ル。今ヲモ失シ、己ヲモ忘レユク閉ザサレシ魂ノ謳、過去、現在、未来ノ何レニモ存在シ得ズ。
若カリシ者ヨ、彼等ノ謬ル過チヲ汝繰リ返スコトナカレ。館ハ未ダ在リテ、次ナル魂ヲ待チテモノ言ワズ眠ル。声無キ館ノ囁キモ、未来ノ訪レ得ル者ノ耳ニササヤキ続ケン。此レ、言霊ノ封印、訪レシ者ヲ永遠ノ迷イニ誘ウ魔ノ館ノ物語ナリ。
