奇妙な光との遭遇とその余韻

異次元

これは僕が経験した、今でも信じがたい体験の話です。話すべきか迷ったのですが、あの出来事がまるで夢のように思える今だからこそ、伝えたいと思いました。どうか奇妙な夢の話だと思って聞いてください。

僕はあるとき、友人たちと久しぶりにキャンプに出かけることにしました。場所は、山間にある人里離れた湖畔のキャンプ場。そこは電波も届かないような山奥で、自然を満喫するにはもってこいの場所でした。村からずいぶん離れた場所に車を停め、そこから歩いて行くつもりで計画を立てていました。参加者は僕を含めて五人。みんな学生時代の仲間で、こういったアウトドアは幾度となく楽しんできました。

その日も、特に問題なく順調に進みました。キャンプ場に到着し、テントを張り、夕食の準備をしながら火を囲んで、久々の再会を楽しみました。ちょっとしたいたずらや、懐かしい話に花を咲かせ、僕たちはいつも通りの夜を過ごしていました。

しかし、その夜中、僕たちは何とも言えない不思議な現象に巻き込まれました。眠る前にトイレに行こうと思い、一人でテントの外に出たんです。夜空には満天の星が広がり、空気は冷たく澄んでいました。そんな中、ふと遠くの暗闇の中に、うっすらと光るものが見えたのです。それが何なのかはっきりとは分からず、最初は月明かりや木々の間に揺れる影だと思いました。

しかし、目を凝らして見るうちに、その光がだんだん大きくなっていることに気付きました。他の人にも知らせようと一瞬考えましたが、その不思議な光は静かに、そして確実に、こちらに近づいてきていました。まるで、周囲の暗闇をじわじわと侵食しながら。

やがて、光ははっきりとした形を現しました。それはまるで巨大な球体のようで、無音で空中に浮かび漂っていました。普通の光ではなかった。何か生物的で、不規則な脈動を繰り返しているように見えたのです。怖気づいた僕はその場に立ち尽くし、言いようのない恐怖が体中を駆け巡りました。

怯えながらも、僕はその光をじっと見続けました。すると、光の中に無数の目があることに気付きました。それらは僕を見つめているのか、それともただ僕を通り越してどこか別のものを見ているのか、何とも言えない感覚でした。とにかくその目たちの視線を感じると、自分の存在が唐突に取るに足らないものだという思いが頭をよぎります。

友人たちを呼ぼうにも声が出せず、ただただ立ち尽くすしかありませんでした。そのとき、光の中から何かが這い出してくるのが見えました。細く長い、何かしら触手のようなもの。それはまるで、僕の思考を覗き込むかのように、こちらに向かって伸びてくるのです。

ここですべてを投げ出して逃げようと思いました。しかし、不思議とその場から動くことができませんでした。足が地面に縫い付けられたかのように、全身が硬直し、動かないのです。そうしているうちに触手のようなものが、僕の目の前にまで迫ってきました。

触手の先端は、大変巧妙に動き、まるで空中に何かの記号を描いているようでした。その瞬間、頭の中に何かが流れ込んできました。言葉では表せない、形容しがたい何か。まるで自分が壊れていくようでした。僕の思考は断片化し、自己の境界が曖昧になっていきます。

何かに支配されているような感覚に襲われ、必死にもがきましたが、それが無意味な抵抗であることもどこかで理解していました。そうしているうちに、周囲の景色がぼやけて、現実感が薄れていくのを感じました。あの光の中の、無数の目がさらに強い輝きを放っています。

そして、次の瞬間、目の前のすべてが真っ白に覆われました。辺り一面には何もなく、ただ無限に続く空白が広がっていました。自分の身体すらもそこにはありませんでした。それどころか、意識だけが取り残されたような不安定な状態で、僕はどこにいるのか、何が起きているのかもわからず、ただ感じ続けるしかありませんでした。

その空間では時間の流れすらも曖昧で、ただただ僕はそこに「ある」だけでした。どれほどの時間が経ったのかもわからないまま、忽然と意識が戻り、僕は誰かに揺り起こされるような感覚で、元のキャンプ場に立っていました。それが一瞬だったのか、長い時を経たのか、僕には判断がつきませんでした。

気付けば、友人たちが心配そうに僕を囲んでいました。彼らは僕がずっとテントの外で動かず立っていたと言います。何があったのかと尋ねられましたが、僕はただ首を振るしかありませんでした。あの経験をどう説明していいのか、自分自身でも理解できず、言葉が出ませんでした。

結局、僕たちは夜が明けるのを待ってすぐに帰ることにしました。車の中では誰も何も言いませんでした。ただ静かに、それぞれがそれぞれの思惑を胸に秘めていたようです。

あれ以来、僕は同じ場所に戻ったことはありません。他のメンバーの誰も、その後ろめたい沈黙を破ることはありませんでした。一つだけ確かなのは、あの夜に見た光景が、僕たちの中で消えることのない影を落とし続けているということ。時折、夢の中にあの光が現れて、僕を冷や汗で目覚めさせるのです。

あの光の正体が何だったのか、今でもわかりませんし、知りたくもありません。ただ、現実のものではなかったことだけは確かです。そして、あの光景に再び出会うことがあれば、もう二度と僕は帰ってこれないのではないか、そんな予感があるのです。

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