東京都内に住む大学生の田中は、授業を終えた後、友人の佐藤とカフェで会っていた。二人はお互いの近況を話しながらリラックスした時間を過ごしていたが、佐藤は不意にある話を始めた。
「田中、聞いたことある? 最近、都内で変な噂が流れてるんだ。友達の友達が実際に体験したらしいんだけどさ、夜中に三人の女の子が公園で無意識のうちに何かを唱えているって。」
田中は興味津々になりながら続きを促した。「それで、その女の子たちはどうなったの?」
「いや、それが誰一人として記憶がないらしいんだよ。夜中に突然起きて、気付いたら公園にいて、何も覚えてないって。」
一方、都内のある女子高に通う山田は、最近友達の斉藤から聞いた話を思い出していた。斉藤の話によると、彼女のクラスメイトの一人が、夜中に無意識のうちに家を出て公園まで歩いていき、そこで奇妙なことをしていたらしい。山田はその話を聞いて少しゾッとした覚えがある。
「斉藤、その子は何をしていたの?公園で。」
「なんか、古い言葉みたいなのを無意識にずっと唱えてたって聞いた。歩道にしゃがみ込んで、小声でずっと…ね。怖くない?」
「マジで?どうしたんだろうね。でもさ、その子たち、共通点は何かあったのかな?」
次の日、田中は大学で出会った心理学専攻の先輩、中村にその話をしてみた。
「中村さん、この話って何か分かりますか?無意識で何かを唱えてるなんて…。」
中村は少し考えてから言った。「実際、集団無意識っていう現象は存在する。この場合、何らかの外部要因がそれを引き起こしている可能性もあるよ。もしかしたら、暗示や催眠が関与しているのかも。」
「でもそれって、どういうことなんですか?直接触れずに暗示をかけるなんて。」
中村はさらに詳しく説明した。「例えばさ、以前からその場所に何か強い思念が残っていて、それが関連する特定の人にだけ影響を与えるとか、ね。」
その話に興味を持った田中は、都市伝説や怪談に詳しい友人の井上にも相談することにした。
井上は田中から話を聞いて、目を輝かせた。「それ、決まりじゃん!都市伝説のネタにピッタリだよ。でも。真相を確かめるってどうするんだ?」
「そうだね、そういう話も含めて、実際にその公園に行って調べてみようかな。何かあるかもしれない。」
数日後、田中と井上は、例の公園へと足を運んだ。周囲は薄暗く、夜が訪れようとしていた。二人は公園の中心に向かい、特に目立つ場所を探して観察することにした。
「井上、ここだね。あの子たちが何をしていた場所って。」
井上は電話を取り出し、地図を確認しながら言った。「ここが噂の場所だ。実際、どんな雰囲気があるのか検証しよう。」
夜風が吹き、木々がざわめく音が辺りに響き渡る。二人はしばらくその場に立ち、耳を澄ました。すると、田中の背筋が何かを感じたかのようにピクリと反応した。
「ねぇ、井上、何か聞こえない?あれ、どこから?」
耳を澄ますと、遠くから微かに声が聞こえてくる。それは古びた言葉のようで、風に乗って流れてくるのだった。二人は息を潜め、声がどの方向から聞こえるのか探ろうとした。
そして、ついにその声の元にたどり着くと、驚くべき光景が目の前に広がっていた。斜面に誰かがうずくまっており、か細い声で何かを呟いていた。注意深く近づくと、それはなんと人形のように見える存在だった。
「井上、これ…まさか…」
その瞬間、声がピタリと止まり、静寂が辺りを包んだ。直後、背後から何者かの気配が感じられ、二人は振り向いた。そこには黒い影が立っており、彼らをじっと見つめていた。
影は一言も発せず、静かに消えていったが、田中たちはその瞬間に何かを理解した。それは、人々の集団無意識が何かを引き寄せているという事実、その存在が三人の女の子たちを通じて現れていたことに対する恐れを示すものだった。
また別の日、井上はこの体験を確かめようと、自らその公園に行くことを決意した。そして、一晩中待ち続けた彼は、一度だけ夢のような光景を見た。三人の女性たちが舞い踊るかのようにそこに現れ、かつて誰もが知っているはずの古い歌を口ずさんでいた。この事象が果たして幻想なのか、それとも異次元の何かだったのか、井上自身にも知る由はなかった。
最後に彼はこう結論した。「この話は誰かに聞いて伝えるべきだ。警鐘を鳴らし続けることで、何かしらの意味が成されるかもしれない」と。
その都市伝説はそうして語り継がれていき、ついには都内の大学生や高校生たちの間で噂となり、闇夜に響く古代の声として語り伝えられたのだった。そして今日もまた、どこかで誰かがその話を耳にし、不思議な気持ちに包まれながら中身のない噂を広めているに違いないのであった。