[視点1: 友人Aの視点]
僕たちのグループは、大学のキャンパス内でいつも集まってバカ話をする仲間だ。ある日、その中の一人、佐々木が「ちょっとした冒険をしてみないか」と言い出した。夜のキャンパスを探索しようというのだ。あまりに急な提案だったけれど、なんとなく乗り気になってしまった。たまには面白いことも必要だろう。
その夜、僕たちはキャンパスに集合した。夜のキャンパスは、昼間とはまったく別物だった。薄暗い街灯に照らされた道は、まるで異世界のようで、誰もいないはずの校舎もどこか不気味に見えた。佐々木は、「この建物に入ってみないか?」と旧図書館を指差した。普段は入れないらしい。ちょっとした肝試しのようで、興奮した。
しかし、旧図書館に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。湿った空気と、何かが腐ったような匂いが漂っていた。予め佐々木が用意した懐中電灯で辺りを照らすと、古い本が無造作に積み上げられていた。突然、背後から足音が聞こえた気がして、振り返ったが誰もいない。それを皮切りに、僕は説明のつかない不安に襲われた。
[視点2: 知人Bの視点]
その噂、聞いた? 旧図書館にね、幽霊が出るって。特に夜になると、足音や声が聞こえてくるんだって。私はそんなの信じてなかったけど、やっぱり気になっちゃう。それでこの前、ちょうどその噂を聞いた友人の佐々木が、「みんなで行ってみよう」って言い出したらしいの。
彼らは夜に旧図書館に入ったんだけど、何かに取り憑かれたみたいな顔して戻ってきた。みんな無言で、何があったかも話さない。それ以来、佐々木が変なんだよね。いつも陽気だったのに急に無口になってさ、大学にも来なくなったっていうし。
[視点3: 佐々木の友人Cの視点]
佐々木と一緒に旧図書館に行った友人たちの話を聞いて、本当に怖くなった。どうも、あの図書館、過去に大きな事件があった場所らしい。古い新聞記事を調べたら、20年前、ある教授が突然行方不明になったという記事が出てきた。夜中に研究室に残っていたらしいけど、結局見つからずじまいだとか。
その教授、実はかなり変わった人だったらしいの。いつも何かに取り憑かれたような目をしていたとか。事件の直前も、何かにおびえていたみたいらしい。でも、確証があるわけじゃないから、都市伝説みたいになっちゃってるけど。
佐々木がそのことを知っていたかどうかわからないけど、あの夜何があったのか、知りたい気もする。でも、あの場所に近づくのは…正直、怖い。
[視点4: 調査者Dの視点]
私は地元の都市伝説を調査している。先日、旧図書館についての噂を聞いて興味を持った。そこで、図書館が設置された当初の記録や、当時の新聞記事を徹底的に調べてみた。
分かったことは、確かに教授の失踪事件があったということ。しかし、何かがおかしい。記事はいくつもあるが、そのどれもが微妙に異なる話をしている。特に、教授の人柄や、失踪当日の詳細について、証言が食い違っている。
私の結論としては、幽霊のようなものを見たとするのは、集団幻想の一種かもしれない。大学という閉じた空間で、誰かが何となく言い始めることで話が一人歩きすることはよくある。佐々木たちも、その噂に影響された可能性が高い。
[視点5: 真相 – 旧図書館の幻影]
旧図書館。そこは夜になると、途端に異世界へと変貌する。真実はこうだ。あの場所には、かつて失踪した教授が生み出した強烈な感情の残滓が今もなお漂っている。教授は何かを研究し、重大な発見をした。しかしそれは、世間には公表できないものだった。悩み抜いた末、教授は自らその研究成果を人知れず隠しました。
ある夜、教授は研究所の闇に飲まれ、その痕跡だけを残して姿を消した。その際に生まれた強い思念が、長年の間に空間に定着し、旧図書館の中を漂っている。あの夜、佐々木たちが感じた不安や幻影はこの「残滓」に触れたために起こった現象だ。教授の思念に触れたことで、彼らは一時的に過去の一部を共有することになったのだ。
現在、その影響を受けた佐々木は、混乱の中で未だ事態を整理できずにいる。彼がその夜に触れたものが何か、まだわからない部分は多い。しかし、一つだけ確かだった。時間と空間の狭間で、かつて教授が抱いた孤独と絶望が、まだそこに在るのだ。
この話が事実かどうか、証拠を見つけることはできない。しかし、誰もが心のどこかで思うだろう。都市伝説というものは、我々が見たくない現実を映す鏡なのかもしれない、と。だからこそ、この話は語り継がれ、恐れられるのだ。