むかしむかしの、ある地において、時は未だ定かならぬ頃、そこには古来より語り継がれし忌まわしき物語が存在せり。これは過去の罪深き行いが幾たびも帳に刻まれ、忘れ去られることなく、現代にまでも影響を及ぼす呪われし語りである。
かつて、地上には繁栄を誇る村があり、そこには人々が日々耕作に励み、天より注がれる恩寵を受け、豊穣の時を享受しておった。この村には、聖なる大樹が天より垂れ下がり、そこに住まう神聖なる者どもが神々の声を聞き届けると伝えられていた。
しかし、ある時、村の長たる者が慢心し、自らが神々に匹敵せんとの野心を抱いたのである。彼は、人智を超えた力を手に入れ、村を治める力を不動とすることを望んだ。彼は、禁忌とされる儀式を施し、聖なる大樹を切り倒し、その根に秘められし力を己のものとしようと試みたのだ。しかし、その行為は神々の怒りを招き、大いなる呪いが地上に降り注がれた。
その呪いは村を飢饉と不毛の地へと変貌させ、村人たちは飢えに苦しみ、嘆きの声を日々天へ届けた。しかし、その声は無慈悲なる呪いの前には虚しく響くのみであった。村の長もまた、その呪いにより、無限の苦悶に苛まれ、次第に命も枯れ果てていったという。
時は流れ、幾星霜が過ぎ去り、かの地にはまた新たな人々が住み始めた。彼らは村の歴史について何も知らぬまま、その土地を耕し、新たなる生活の築き始めたのである。しかし、彼らが知る由もなきところには、未だその地には古の呪いが色褪せることなく息づいておった。
ある晩、村の若者たちが興じ、古き噂を耳にした。彼らはかつての村の長が起こした禁断の儀式と、それに続く呪いについての逸話に興味を抱いた。そして、一人の若者が、ふとした興味本位から、再び似たような儀式を行おうと考えたのである。
彼は仲間に声を掛け、彼らと共に古の儀式を模倣しようとした。やがて、彼は村はずれに古より伝わる岩場へと足を運び、そこに秘められし力を解き放たんとし、神々に反逆せんと試みたのだ。
然れども、彼の振る舞いは再び眠れる呪いを呼び覚ます結果となった。地は再び震え、闇の中に宿る古代の力が目覚めたのだ。天は紅く染まり、稲妻は幾筋となく駆け巡り、村には凄まじき恐怖が広がった。
村の人々はその晩、かつて村を訪れた不毛の呪いを再び感じ、彼らの心には大いなる恐怖が刻み込まれた。次の日には、村の至る所に異変が現れ、一夜にして村人たちの平穏な日々は崩れ去ったのである。懲罰として課された飢饉は再び訪れ、村人たちの生命を次々と蝕んでいった。
若者は己の軽挙を悟り、村を救う術を求めて古の記録を探した。しかし、それは徒労に終わった。呪いの語りは、その始まりを刻むのみで、果てについては何ら語られていなかったのだ。彼はどうすることもできず、ただ村の滅びゆく様を見届けるより他なかった。
その後、若者は一人孤独の果てに追いやられ、かつての村の長と同じく、魂までが枯れ果てゆく運命を辿ったのである。
この物語は忘れ去られることなく語り継がれ、村の跡地はかつての呪いの傷跡を残したまま、後世に教訓を示す存在となった。この地に足を踏み入れし者は必ず、過去の過ちを繰り返すまいと祈り続け、神々の声に耳を傾けるよう戒められるのである。
古より続くこの物語は、人智を超えた力の前には人の思いが如何に儚く脆いものであるかを如実に示しているのだ。村人たちの魂は今もなお、息づかぬ地に宿り、神々の咎めにさらされながら、静かに大地の中で眠り続けている。彼らの声は、風に乗り、時折、現代の我らが耳元で囁くのかもしれない。「決して愚かな野心を抱いてはなりませぬ」と。
如上の物語は、我らが知るべき教訓を残し、現代に至るまで影を落とし続ける。人は如何なる歴史を背負おうとも、尊ぶべき者を忘れずに、その声に従い、自らの立場や使命について深く省みるべきなのである。それを怠る時、我らは再び同じ運命を繰り返すやもしれぬのである。波瀾は去り、ただ再臨を待つ者たちよ、古の言葉に耳を澄ませ、決して呪いを招かぬように生を謳うべし。