呪いの掲示板と鏡の儀式

ネット怪談

この話は、俺が数年前に実際に体験した出来事なんだけど、今でも思い出すと背筋が凍る。夜中に一人で読むのはお勧めしない。

当時、俺は大学生で、夜遅くまでネット掲示板で暇をつぶすのが日課だった。勉強からの息抜きということで始めたんだけど、次第に習慣化してしまった。特に匿名掲示板の都市伝説スレッドは面白くてさ、暇さえあればそこを覗いてた。あの日もいつものようにスレを読み漁っていると、一つの書き込みが目に留まった。

「【警告】このスレを読んでいると呪われるという噂が…【実体験あり】」というタイトルのスレッドだった。興味をそそるには十分な内容だったけど、俺は基本的にそういうのには懐疑的だったから、軽い気持ちでスレを開いた。

スレッドの中身は、過去にこのスレを読んだ人たちが次々と呪われて、不幸な出来事に見舞われたという体験談で溢れていた。普通なら笑い飛ばすところなんだが、その日は何故か好奇心が抑えられなくて、怖いもの見たさに全部通して読んでしまった。

その日は何事も無く過ぎ去った。しかし、次の日あたりから俺の周りで奇妙なことが起こり始めた。まず、家の中で立て続けに物が倒れるようになった。特に台所周辺で、無造作に置いていたコップや皿が突然落ちたりするんだ。最初は自分の置き方が悪かったんだろうと気にも留めなかったが、それが日に日に頻繁になる。

数日後には、夜中に聞こえてくる奇妙な音で目が覚めることが多くなった。最初は家鳴りだと思っていたけど、音のする場所が家の中でも特定の場所に集中していることに気づいた。決まって、部屋の角から何かを引きずるような音がするんだ。気味が悪くて、寝不足が続いた。

その間も、例のスレッドでは新しい書き込みが増えていた。どうやら同じような現象に悩まされている人たちが次々と状況を報告していた。俺はそれにも参加して、自分の体験を書くことにしたんだ。もしかしたら何か助かる手がかりがあるかも知れないと思ったから。

その書き込みをしてからしばらくして、俺の携帯に奇妙な着信が来るようになった。非通知で、しかも深夜にかかってくるんだ。怖くて出られないままでいたんだけど、留守電に何かが記録されることはなかった。次の日の朝、何故か通話履歴から消えているという、まるで夢の中の出来事のような感覚。

思い切って、ある夜、その着信に出てみた。すると、息が詰まるような静寂の後、かすかに何かが囁いているのが聞こえた。言葉は何一つわからなかったけど、聞いているだけで心臓が締め付けられるような恐怖だった。恐怖に耐えきれなくなってすぐ電話を切った。

不眠と恐怖のせいで精神的にも限界が近づいていたある日、俺は再び掲示板に戻った。そして、そのスレッドである投稿を見つけた。「怖くても、最後まで読め。」という書き込みがあり、その返信に呪いを解く方法が書かれていた。

その方法とは、深夜0時に鏡を持って、部屋の四隅を回りながらお祓いの言葉を唱えるというものだった。正直、眉唾物と思う反面、試す価値はあると考えた。藁にもすがる思いで、そのやり方を試すことにした。

深夜0時、部屋の電気を消し、手に鏡を持って一歩ずつ部屋の四隅を巡り始めた。言葉を暗記し、震える声で唱えながらゆっくりと動く。すると、最後の角に差し掛かった瞬間、鏡に俺の後ろに立っている何者かの影が映った。

驚愕しつつも振り向けなかった。俺は恐怖心に打ち勝つため、目を閉じ、その場で唱え続けた。途中で何度も声がかすれたが、最後までやりきった。その瞬間、部屋全体が冷たい気配から解放されたのを、確かに感じた。

あれから怪現象はぴたりと止んだ。掲示板ではあのスレッドが偶然消えた、と知り、自分が体験した恐怖は何だったのか頭が混乱した。科学的に説明のつかない出来事だったが、今でもあの時の鏡に映った影のことを思い出すたびに背筋がゾクッとする。

もしかすると思い込みだったのかもしれないが、一つだけ確かなのは、あの経験をした後、不思議とネットでの怖い話にはあまり興味が持てなくなったということ。もうあんな思いは二度としたくない。もし、これを読んでいる人がいるなら、くれぐれも軽々しく怪談などには手を出さない方がいい。それが、俺の心からの忠告だ。

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