#匿名掲示板の恐怖体験

ネット怪談

これから話すことが、本当にあったことかどうかはわからない。ただ、僕自身が体験したことを、そのまま書くことにする。信じるか信じないかは、君に任せる。

3ヶ月前のことだった。僕は普段からネットサーフィンが趣味で、特に匿名掲示板を巡るのが好きだった。その日は、仕事が終わった後に疲れを癒やすためにある掲示板を読んでいた。その掲示板は、オカルト系の話題を集めたもので、ただの冗談半分の投稿が多かった。しかし、その日、僕は普段と少し違う雰囲気の書き込みを見つけた。

「助けて」というシンプルなタイトルが目に飛び込んでくる。本文には、「昨日から、何かにつけられている気がします。一人暮らしのはずの部屋で、夜中、誰かがいるような気配がするんです。本当に怖い」と書いてあった。その書き込みには、何か現実感のようなものがあって、普段はスルーする投稿も、その時ばかりは思わず続きを読みたくなった。

それから数日の間、その投稿者は、少しずつ状況を報告してきた。最初は音がすると言っていたが、次第に物が勝手に動くようになり、挙句の果てには見えない何かに触れられる感覚があると訴えていた。掲示板の住人たちは、茶化す者もいれば本気で心配する者もおり、僕は後者だった。

特にある夜、投稿者が「もう限界です、何かがベッドの下から私を見ている」と書き込んだとき、僕はぞっとした。その書き込みには今までにない切迫感があったからだ。掲示板の他の人々もその投稿に反応し、様々なアドバイスやお祓いの方法を書き込んでいた。

だが、その日を最後に、その投稿者はぱったりと書き込みをやめた。それが不安に拍車をかけた。彼が無事であるのか、それとも何か悪いことが起きてしまったのか、考えれば考えるほど気になってしまう。

仕事に集中できず、僕はその掲示板を何度も見返した。もしかしたら、あの書き込み主が何か情報を更新しているのではないか。そう思うと、心臓がやたらと早く脈を打つのだ。

ある時、いつも通りに掲示板を眺めていると、ふと画面の端に何かの影が映るのに気づいた。最初はPCの画面が反射した影だと思った。しかし、どこかおかしい。その影は、画面上にもかかわらず、少しずつ動いているように見える。

これは何だろう?そう思って、僕は何度も目をこすった。影は消えず、むしろはっきりとその輪郭を表してきた。その影は、画面の中を動き回り、まるでこちらを覗き込んでいるように思えた。

その時、画面に一行の文字が浮かび上がった。「見てるよ。」瞬間、背筋が凍りつくような感覚を覚えた。誰が見ているのか?僕は恐怖と好奇心に駆られ、一瞬だけ体が固まってしまった。

そして気づいた時には、掲示板には新しいスレッドが立っていた。タイトルは「次はあなたの番」。誰かの悪戯かと思ったが、ふとした瞬間に感じるぞわぞわとした気配は何一つ変わらない。僕は頭を振り、気のせいだと自分に言い聞かせるが、どうしても手汗がにじんでくるのを抑えられない。

その夜、ベッドに入った後も頭の中にあの文字列がちらつき、眠れなかった。部屋がいつもよりもずっと暗く感じられ、ほんの一瞬たりとも動くことができない。まるで僕の部屋にも、何かが侵入してきたのではないかという、得体の知れない恐怖感が募った。

真夜中過ぎ、ふと何かの音で目が覚めた。何かが部屋の中を動いている音。家族もルームメイトもいないはずなのに。「誰だ?」小さな声で呟いた僕の声は、闇に吸い込まれて消えた。でも返事はなかった。ただ、ベッドの下から微かなうめき声のような音が聞こえる。

怖くて動けないでいると、やがてその音はゆっくりと静かになり、やがて消えていった。僕は朝まで一晩中、全身が緊張したままで布団にしがみついていた。

翌日も仕事に行くが、疲労感と不安で頭がいっぱいだった。その夜もPCの前に座るのが怖くなっていたが、何か未解決のまま放置するのも嫌だった。もう一度掲示板を確認してみる。

画面上には新しいレスが追加されていた。それは昨日までとは違うIDからのもので、「この話を信じたらいけない」と警告する内容だった。しかし何だかんだで僕の心中は落ち着いた。それと引き換えに、何か大事なことを忘れたような気がした。

でも、どうしても頭の片隅に引っかかるものがある。自分の中で、この数日間の出来事の重なりをどう処理すれば良いのか、まだ答えが出ないままにある。

ただ、一つだけ言えるのは、ネットの向こう側には僕らの知らない世界が広がっているかもしれないということ。そしてその世界がこちらを覗き込んでいるとしたら、それはきっとこんな形をしているのだろう。

以上が僕の体験だ。誰が何を信じるかは自由だが、僕としてはあの投稿者のその後が気になって仕方がないのだ。結局その後、彼からの書き込みはないまま。名無しのまま彼がどこかで生きていることを祈るばかりだ。この先、また奇妙な体験をするのかもしれない。でも、もう少しの間は掲示板を眺めるくらいにとどめておこうと思っている。

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