不気味な館の謎と消えた訪問者

閉鎖空間

私はこれまで数多くの事件現場を見てきた。しかし、今回ほど不気味で、論理では説明しきれない現象に遭遇したことはない。私がその事件に巻き込まれたのは、ある冬の夜のことだった。

その夜、探偵である私は、依頼を受けてとある山奥の古い館を訪れた。外界から完全に切り離されたこの館は、大きな石壁に囲まれ、唯一の出入口は鉄製の重厚な門だという。依頼人の話によると、館の中で不可解な現象が次々と起こり、一人また一人と館に閉じ込められた人々が失踪しているということだった。

館の中に足を踏み入れると、すぐに異様な雰囲気が漂っていることに気づいた。石造りの廊下は長く、薄暗い。天井に吊るされた古びたシャンデリアが、かすかに揺れている。不気味な静けさが、まるでこの場所が時間の流れそのものから切り離されているかのように思えた。

依頼人は、かつてこの館の使用人であり、ある出来事をきっかけに彼女だけが外へ出ることができたという。彼女の証言によれば、館の主であった男は、何か邪悪なものがこの館に巣食っていると信じ、ある時期から来訪者を拒むようになった。そして、ある晩を境に、彼を含む十数名の住人が忽然と姿を消したという。

私は、まず館に残された日記や手紙、資料を調べることにした。これらの記録に載せられた震えるような筆致や、断片的ながらも具体的な恐怖の記述には、言い知れぬ異常さを感じずにはいられなかった。それらから導き出せる情報は、何か儀式めいたことが館の中で行われていたということだけだ。

それにしても、この閉じられた空間で一体どうやって姿を消すことができたのか?密室殺人の原理を考えるようなもので、この館における失踪事件もまた論理的に説明がつくはずだと、私は自分に言い聞かせ、館内をくまなく探索することにした。

深夜、脚立を使って埃をかぶった古い本棚の上を調べていた時、誰かの視線を感じた。振り返っても、もちろん誰もいない。しかし、その視線はどういうわけか、私の背後にじっと張り付いている。まるで、自分が見られているかのような錯覚に陥らせられる。

いよいよ館そのものが、何かしら得体の知れない存在に支配され、時には訪問者を自らの内に飲み込んでいるとの確信を深め始めた私は、次第に思考そのものが鈍化していくのを感じた。閉塞した環境の圧力が、理性を麻痺させにかかっているのだ。

その後間もなく、館の一角で壁に埋め込まれた装置を発見した。その装置には、どうやって動かすか分からない複雑な機構があり、電力が供給されている痕跡がなかったために動作せずに放置されているようだった。しかし、私はある手紙の一文から、この装置が何かしらの重要な役割を持っている可能性を感じた。

待ち受けるものは悪夢そのものだった。装置の稼働には成功したが、その瞬間、館全体がまるで劣化したフィルムのように軋み始めた。突然の異音と振動が、館の至るところから湧き上がる。壁に浮かび上がった模様が、ゆっくりと蠢くように見える。

そして、ついに目の前にその異様な現象が現れた。それはもはや、言葉で説明できる形をしておらず、目が錯覚を起こしているのかと何度も瞬きを繰り返した。しかし、それは現実だった。そこには何もない空間が、あたかも生き物のように渦巻いていた。そして、それがゆっくりと出口へと姿を変え、私を吸い込もうとしているのだ。

慌てて後ずさりし、恐怖に襲われながらも、踏みしめた床下にかつて石の敷き詰まっていた場所が空洞化していることに気づく。何もかも消えていく空洞、それがこの館の「出口」と呼べる場所であり、開け放たれている側だと確信した瞬間だった。

最後に見たのは、そこへ吸い寄せられていく奇怪な光景に恐れを抱くことしかできなかった自分自身である。真相を追い求めた結果、館に呑まれるという皮肉を味わいながら、私はその異空間へと落ちていった。

後に私が警察によって発見された場所は、館の裏山にある洞窟内であった。意識を失ってからどれくらいの時間が経ったのか、もはや覚えていない。そして、館はあの日からいつの間にか立ち入り禁止区域となり、誰一人として再びその内部に足を踏み入れた者はいない。

この事件の調査報告は終わりを告げたが、未だに私の中でくすぶり続ける疑問がある——この現象は一体、自然法則のもとに収束するものなのか、それともそれを超越した恐ろしい何かの為せる技だったのか。それを解き明かす術は未だ見つかっていない。

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