不気味な街灯の伝説

都市伝説

それは、ある友人から聞いた話だ。その友人も「知人の友達が体験したらしい」と語っていて、真偽のほどは定かではない。ただ、不思議なことに、その話を聞いてからというもの、夜道を歩くとき背筋にジワリとした寒気を感じるのだ。ここでその物語を紹介しようと思う。

その知人の友達、仮にユウタとしよう。ユウタは大学を出てから地方の小さな町に就職した。町は静かで、何も変哲もない田舎町。だが、住むには程よいところだった。初めての一人暮らしにワクワクしながら、新しい職場に向かっていく日々が始まった。

仕事にも慣れたある日のこと、ユウタは同僚から飲み会に誘われた。「この町にはちょっとした伝説があるんだ、知ってるか?」と、居酒屋で酔いの回った同僚は語り始めた。「夜、十一時過ぎに、この地域のある街灯の下を通ると、とあるモノが見えるって話だ。そのモノを見たやつは、次第におかしくなって、最終的には姿を消してしまう。まあ、噂に過ぎないけどな」と笑った。

ユウタは眉をひそめたが、酔いに任せて同僚たちの話に耳を傾けた。街灯の下という不気味な噂話は、その場の雰囲気を少しだけ変えた。それはまるで、静かな波がひたひたとを打ち寄せるような、そんな具合の不気味さだった。

その後数日間、その噂がユウタの頭の隅に引っかかって離れなかった。確かに、通勤路には古びた街灯がいくつもある。古びたもの特有の錆びついた色や、時折瞬く明かりは少しずつ心に影を落とした。だが、ユウタは「ただの作り話だろう」と思い直し、仕事に精を出すことにした。

しかし、心の片隅にぽっかりと空いた穴は埋まらなかった。夜道を歩くたびにその穴は徐々に広がっていくようだった。ある夜、ユウタは決心した。「その街灯とやらを確認して、この疑念を吹き払おう」。それがユウタにとって最も合理的な判断だった。

その晩、ユウタは最寄りの駅から帰路についた。時計が十一時を過ぎたことを確認すると、わざと遠回りをして、噂の街灯があるという道へ向かった。道はすでに暗く、蒸し暑い夜風が身体にまとわりつく。彼は心臓の鼓動を意識しながら、そっと辿り着いた。

街灯は他のどれとも違うように見えた。それは単なる思い込みかもしれなかったが、その光には独特のちらつきがあり、ユウタの目を捉えて離さなかった。彼はその場に佇み、しばらく街灯を見つめていたが、何も起こることはなかった。「やっぱりただの作り話か」と、少なからず安堵したその時だった。

ふと、視界の片隅に何かが動いた気がした。振り返ると、誰もいない。だが、それは何とも言えない違和感を残していた。心なしか、空気が重く感じられる。彼はそこで立ち止まって耳を澄ませ、不穏な気配の正体を探った。しかし、町の遠くから聞こえる犬の遠吠え以外、何の音も聞こえない。

その次の瞬間、突然風が強くなり、街灯の光が激しく揺れた。ユウタは息を詰めてその場に佇んでいると、まるで後ろから見られているような感覚に苛まれた。そして、背筋に氷のような寒気が走り、身を縮めた。

「誰かいるのか?」と、彼はおずおずと尋ねた。しかし、返事はない。さながら生き物のように動く影が、彼の周辺でぐるりと周回しているようだ。その影は、まるで彼を品定めしているようだった。それに気づいた瞬間、ユウタは無理やり自分の視線を剥がし、不気味な街灯を振り返るのを強制的に止めた。

その場から離れるうち、背後に何かが気配を残してついてくるように感じた。その誘引が恐ろしかったが、振り向くことだけはしなかった。彼はその歩調を早め、最後には全力で走った。汗みずくになりながら、やがて自宅の明かりが見えるとき、彼は息も絶え絶えだった。

それ以来、その街灯の下を再び通ることはなかった。噂のことも、次第に考えることはなくなっていた。しかし気づかないうちに、彼の心の中にいつも小さな影が潜んでいるような気がする。時折、それは夢の中で彼を訪れ、彼を眠りの奥へと誘う。目覚めるたびに、夜の静けさに包まれるとき、彼はあの夜の寒気を思い出さずにはいられない。

もしかすると、それが噂に過ぎないということを証明しようとした試みが、逆に目覚めさせてしまったのかもしれない。あるいは、もともとその街灯の下で何かが待っていたのだろうか。

あの町では、次第に噂は忘れ去られ、誰もその街灯のことを話題にすることはなくなった。それでも、誰かがまたその道を通りかかるたびに、心の奥に不安の種が蒔かれる。それはまるで繊細なシルクの糸が絡むように、少しずつ少しずつ心に食い込み、いつの間にかその町から去る理由となってしまう。

ユウタの姿をもう二度と見た者はいない。彼の行方を誰も追うことはなかった。だが、あの街灯の下には、かすかにしびれる寒気がいまだに残っているのだと言う者もいる。それはただの風の流れに過ぎないかもしれない。それでも、やはり不気味な寒気を帯びたその道を、誰もあえて進もうとはしないのだ。

そして、物語は終わりがないように思えるかもしれない。ただ、誰も確かめようとはしない。おそらく、この話も、また別の誰かが「知人の友達が体験したらしい」と言って語る話として、どこかで語り継がれてゆくだろう。

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