2023年9月15日
今日は大学のサークルで久々に飲み会があった。参加者は僕を含めて7人で、みんなそれぞれ忙しくしていて最近はなかなか集まれなかった。久しぶりに会った仲間たちと、夜遅くまで語り合い楽しい時間を過ごした。2次会も終わり、最寄りの駅まで歩いて帰る途中、友人のケイがふと不思議な話をし始めた。
「俺の知り合いの友達が、最近ちょっと怖いことがあったんだよね。あまり信じられないかもしれないけどさ、聞く?」
酔っ払っていたこともあって、僕は面白半分に話に耳を傾けた。その話というのは、友人の友達の友達が体験したという奇妙な出来事だった。
2023年9月18日
ケイの話がどうにも頭から離れない。彼が話したのは、夜中に妙な音が聞こえるということで、知り合いの友人がある晩自宅で遭遇したものだった。何でも、その友人の知り合いが夜、寝静まった住宅街を歩いていると、どこからともなく「助けて」という声が聞こえるというのだ。最初は夢でも見ているのかと思い、無視しようとしたらしいが、その声はどんどん近づいてきて、とうとう彼のすぐ隣で「助けて」とはっきり聞こえたらしい。
周りを見渡しても誰もいない。しかし、確かに何かがいる、その気配は明らかだったそうだ。
2023年9月21日
ケイの話が気になって、大学の図書館で同じような体験談が書かれた本を探してみたが、特に目立ったものはなかった。ただ、怪談話として似たようなものはいくつか見つけることができた。友人の友達の知り合いが体験したというからには、全く根拠のない話ではないと思うし、実際にそんなことが起こるのかもしれないと考えると少し怖い。
2023年9月25日
今夜はなんとなく眠れない。さっき、窓の外から女性の声がした……と感じたのだが、考えすぎだろうか。少し耳を澄ますと、やはり何も聞こえない。ホラー映画を見すぎたせいなのか、最近のケイの話もあって何かに神経質になっているのかもしれない。気のせいだと思うことにしよう。何も起こらない、そう信じてリラックスしようと心がける。
2023年9月27日
ただ事ではない夜が続いている。昨夜もまた窓の外から声がした。今度はもう少しはっきり聞こえた気がする。「助けて」と。友達の知り合いの話が頭にこびりついているのか、それとも本当に何かが起こっているのだろうか。勇気を出して窓を開け、外をのぞいてみた。でも、やっぱり誰もいない。何も見えない。ただ、夜の風が冷たい空気を運んでくるだけだ。
2023年10月1日
限界だ。再び「助けて」という声に襲われた今夜、ついに窓を開けようとする手が震えた。一度、外を見ることをやめ、ベッドに戻ろうと決めた。だが、声は耳の奥に響き続け、眠ることができるはずもない。考えすぎかもしれない。でももし、もしこのままにしておくと何かよくないことが起こるとしたら。
2023年10月3日
昨夜、初めて顔を見た。窓の向こうに、確かに何かの人影があった。女性だった。彼女は窓越しに静かに立っていた。幽霊のように半透明で、直視することができずに恐怖で目を瞑ってしまった。声はしなかった。きっと呆然としている僕を冷静に見つめていたのだと思う。目を開ける勇気が出ず、そのまま朝まで震えて過ごした。彼女は朝にはいなくなっていた。
2023年10月5日
このままではおかしくなってしまう。誰に相談すればいいのか分からない。ケイに話しても信じてもらえないだろう。それに、話してしまったら本当に何かが起こりそうな気がしてならない。でも、どうしていいか分からない。どうしたらいいんだろう。
2023年10月7日
またあの女性が現れた。一晩中、彼女は窓の外に立っていた。今夜は「あなたに聞いて欲しい」と言ってきた。何を聞いて欲しいのか分からない。話を聞かなければいけないのか。それとも、このまま無視し続けるべきなのか。冷たい夜風と彼女の目が、ずっと僕を責めているようでひどく疲れる。もはや何が現実なのかさえ分からない。
2023年10月10日
今日、勇気を振り絞って窓を開けてみた。でも、やっぱり彼女はそこにいなかった。ただ、どこからともなく、微かに「ありがとう」と聞こえた気がした。それは彼女からの希望のメッセージだったのか、あるいは、何か別の存在が僕を罠に誘い込もうとしているのかもしれない。これからどうすればいいのか、全くわからない。
自分が狂ってしまったのかもしれない。このノートに書いてあることが現実なのか、作り話なのかさえ分からなくなってきた。しかし、これだけは確かだ。この声が消える日は、僕がその理由を見つけ出さなければならないのだと感じている。