不思議な神社の足音との遭遇

心霊体験

ある夏の終わりのことでした。まだ暑さが残る夕方、私は仕事を早めに切り上げて自宅への帰路をたどっていました。途中、ふと思い立って近所の古い神社に立ち寄ることにしたのです。ここは普段は人気がなく、静かでひっそりとした場所でした。木々に囲まれた小道を抜けると、古びた鳥居が私を迎えました。鳥居をくぐると、一瞬ひんやりとした風が肌を撫で、少し不思議な感覚がしました。これもよくあることだと自分に言い聞かせ、私は本殿まで進むことにしました。

神社の本殿に着くと、私はいつものように手を合わせ、日々の感謝を込めて静かに祈りを捧げました。その時、背後からかすかな足音が聞こえてきたのです。振り返ると、誰もいませんでした。この神社は本当に人気が少なく、ふだん誰かと出くわすことはめったにないので、少し不思議に思いました。しかし、その足音は何度も聞こえ、ふっと消えてしまうのです。まるで私をからかうかのように。不気味に感じながらも、私はその場を立ち去ることにしました。

その夜、家に帰ってからも心のどこかでその足音のことが引っかかっていました。何事もなかったかのように過ごそうと思いましたが、どうしても気持ちが落ち着かず、そのまま眠りにつきました。夜中にふと目を覚ますと、部屋の中が真っ暗で、いつもなら感じない異様な圧迫感がありました。何かがおかしい、そう感じました。耳を澄ますと、あの神社で聞いた足音が、また聞こえてきたのです。それは廊下から聞こえ、少しずつ近づいてくるようでした。

心臓が激しく高鳴り、私は布団の中で息を潜めました。それでも足音は止まりません。そして、ついには私の部屋のすぐ外で、その気配が止まったのです。その時、部屋のドアがきしむ音とともに、ゆっくりと開き始めました。恐怖で身動きが取れず、まるで悪夢の中にいるような感覚でした。薄明かりの中で、ドアの隙間から何かがこちらを覗いているのが見えました。それは人のような形をしていましたが、やはり何かが違いました。顔はぼんやりとしていて、まるでここに属さない存在のように見えたのです。

私は意を決して目をきつく閉じ、ひたすら「これは夢だ、早く覚めてくれ」と心の中で願いました。すると、再び静寂が訪れ、気配が消え去ったのを感じました。恐る恐る目を開けると、そこには何もありませんでした。朝の光が差し込むまでの数時間、私はその場を動けず、ただ布団にしがみついていました。

翌朝、あの神社にお参りに行き、何事もなかったかのように過ごしてみましたが、どうしてもあの出来事を忘れることができませんでした。友人に話してみましたが、それはただの夢だとの返事。しかし、あの足音とドアが開く瞬間の感覚は、あまりにもリアルで、ただの夢だとは思えません。

後日、再び神社を訪れる機会があり、勇気を出して地元の神主さんにあの晩の出来事について尋ねてみることにしました。神主さんは少し驚いた顔をしたものの、静かに私の話を聞いてくれました。そして、しばらく考え込んだ後、静かに言いました。「この神社には古くから何かが棲んでいるという噂があります。この地に住む人々を護っている存在ですが、時に悪戯をすることもあると聞いています。それがあの日のあなたを見守っていたのかもしれませんね。」

その言葉が真実かどうかはわかりませんが、それ以来、私はあの神社に行くたびに敬意を持ってお参りするようにしています。それ以後、あのような出来事は二度と起きませんでしたが、時折、神社を訪れるたびに感じるひんやりとした空気を味わいながら、あの晩のことを思い出します。身近でありながら、何か不思議な力が働いている場所かもしれないと、今ではそう思うようになりました。どこかであの存在が、私たちを見守っていると信じつつ。

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