ネット掲示板の心霊写真探索記

ネット怪談

あれは、ある夏の蒸し暑い夜のことだった。僕は日課となったネットサーフィンをしていた。いつものように匿名掲示板を開き、興味深い新スレッドを探していると、一つの書き込みが目に留まった。

「【心霊】奇妙な写真を撮ったんだが【閲覧注意】」

そんなタイトルだった。しかし、スレの中身はすでに削除され、ただいくつかのレスが残っているだけだった。それでも、削除された内容がどんなものだったのか気になり、スレッドを経由していくつかの関連スレッドをたどった。

「オリジナル投稿者は、夜中に訪ねてはいけない場所の写真を撮ったようで、その中に不気味なものが写り込んでいたらしい」

興味深さが恐怖に取って代わり、僕はさらなる情報を求めてネットの海を潜ってみた。すると、その心霊写真がどのようなものかを詳細に議論しているフォーラムを見つけた。

「写真には、古びた廃材のような木造の小屋が写っている。しかし、その窓から外を覗いている黒い影のようなものがある。投稿者いわく、その場所には誰もいなかったはず」

読み進めるうちに、背筋が冷たくなっていく。窓から覗くその影は、人の形をしていると言う。それ以上の情報を求め、フォーラムを巡るうちに、その投稿者がいたとされる座標、すなわち呪われた場所の話まで行き着いた。

「その場所は、地元の人でも近づかない、昔から怪異が多発するいわくつきの場所だ」

不意に、思い出した。自分の住む町でも、そんな噂のある場所があったことを。心霊スポットとして、若者の好奇心を惹いてやまないその場所。どんどん興味がわいてきた。

その晩、眠れないほどにそのことばかり考えてしまった。画像掲示板で手に入れたその写真も、どうにも気になった。窓から覗くその黒い影の正体は何なのか。なぜか、その影が自分を見つめ返している錯覚に囚われた。

次の日、どうしてもその場所に行かなくてはならない衝動に駆られた。日中の暑さが和らぐのを待ち、夜になってから家を出た。場所は自転車で数時間の距離だった。辺りが静まり返る頃には、冷房も効かないうっとうしい夏の夜の湿気が、不必要に肌をべたつかせる。

廃屋にたどり着いた時、胸の鼓動がなぜか早まっていた。周りには誰もおらず、ただひっそりとした気配だけが支配していた。窓から覗くその黒い影。もしかしたら、またそこに佇んでいるのかもしれない。

興味と恐怖が絡み合いながらも、僕はその廃屋に足を踏み入れた。月明かりが弱々しく廃屋のシルエットを浮かび上がらせている。警戒しながら、土の匂いと少しの湿気を伴った空気を嗅ぎ分けるように歩いてみた。

廃屋の内部は荒れ果てていて、壁には謎の落書きが散らばっていた。その中心にある窓の場所へ進んでいく。月明かりは正面で僅かに揺れ、意識的に見えない影を大きく映し出していた。

瞬間、何かの気配を感じた。背筋に氷が走り、振り向くと…。

その瞬間、目に飛び込んできたのは、ただの夜の闇だった。それでも何かがそこにいる気がしてならない。ふと、掲示板で見たあの写真の窓の存在を思い出して、振り返ってしまった。窓枠の向こうには、予期せぬ明暗の差があり、どうしても見てはいけない何かを捉えてしまう。

そこには何もなかったはずなのに、その夜の闇の中にぼんやりと黒い影が…。息が詰まるような居心地の悪さの中で、呼吸の音だけが鼓膜を突き抜ける。

息を呑んだその時、その黒い影が不意に動いた。影が、僕を、見ている。そう、あの疑念が確信に変わった。僕の体は、突如押し寄せた恐怖から凍りついて動けなくなった。影から放たれる視線は、まるで魂を絡め取るようだった。

立ち尽くしたまま、時間が真夜中に溶け込んでいく。その時、ほんのかすかな声が耳に届いた。「…どうしてここに…。帰れない…。もう帰れない……」

この場所に住まう何かが、僕を警告しようとしていたのか、それとも……。影が本来の姿を偽って、ずっと彷徨い続けているのかもしれない。恐る恐るその場を離れようとしたが、足が地面に張り付いているかのようだった。

ようやく重い足を引き剥がし、小屋を離れ、自転車を取りに行く。逃げるように走り始めると、体に押し寄せる夜風とともに、何かが追いかけてくるような気がしてならなかった。

音楽をかけ、足元を疾走させた。何かが追ってきているわけではなかった。ただ、自分の中の恐怖心だけが、冷や汗を垂らさせていた。

その日から、ネットでよくある心霊写真を見ても、あの日の影の恐怖感が甦るだけになってしまった。それがわかるのは、実際その場所に足を運んでしまったからだ。その時の感覚が忘れられない。

日常に戻ってはいるが、あの廃屋の影は一度も心から離れない。あまりにもリアルな体験の記憶。いまだ切り離せずにいるあの恐ろしい夜の痕跡を見て、心霊スポットの噂はやはり事実かもしれないと、改めて身の毛がよだつのだ。

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