「霧の村の禁忌:取材の果てに見た火祭りの謎」

風習

ト書き:霧が立ち込める山深い村の風景。狭い一本道を進む車一台。カメラが車のナンバープレートを捉える。外部の地名が書かれている。

シーン1:車内

ト書き:運転席には、東京から来たジャーナリスト、佐藤。その横には彼の助手、田中が座っている。

佐藤:「この村が最後か…。ここまで深い霧なんて、聞いてなかったな。」

田中:「本当にここまで来る必要があったんですか?噂で聞いた風習なんて、都会では誰も信じないですよ。」

佐藤:「噂だとしても、何かあるかもしれない。確認せずにはいられない性格なんだ。」

シーン2:村の入り口

ト書き:車が村の入り口に停まる。石碑が立っており、古びた文字で「梨ノ木村」と書かれている。村は閑散としており、人影は見当たらない。

田中:「これが梨ノ木村…誰もいませんね。」

佐藤:「(カメラを手に取り)よし、歩いて回ってみよう。」

シーン3:村の中心

ト書き:二人が歩きながら村を見回る。どこか異様な静けさが漂う。木造の古い家屋が立ち並ぶ。村の住人らしき人々が遠くから二人をじっと見ている。

佐藤:「見られているな…。歓迎されてない感じか。」

田中:「まあ、よそ者ですから。」

シーン4:村の神社

ト書き:村の中心に古びた神社がある。入口には独特な模様が刻まれた石の鳥居がある。そこに村の老人、村長が現れる。

村長:「お前たちは誰だ?」

佐藤:「東京から来たジャーナリストです。この村の風習について取材に来ました。」

村長:「(険しい表情で)そんなものに興味を持つな。この村には、お前たちが踏み込んではいけないことがある。」

佐藤:「(カメラを構える)それを教えていただけませんか?」

村長:「(少し間を置いて)今夜、火祭りがある。この神社で行われる。だが、余所者は関わらないほうがいい。」

シーン5:宿

ト書き:村の唯一の小さな宿にチェックインする二人。村の青年、タケシがカウンターに立っている。

タケシ:「何もない村ですが、ゆっくりしていってください。」

田中:「(宿帳に記入しながら)今夜、火祭りがあるって聞きました。」

タケシ:「あれは古い村の風習です。見るだけなら構いませんが、決して参加しないでください。」

佐藤:「そんなに危険なものなんですか?」

タケシ:「(小声で)何年前か、よそ者が参加したことがあった。でも、その人はその後、行方不明になりました。」

シーン6:火祭りの夜

ト書き:夜、神社には無数の松明が灯され、不気味な雰囲気。村人たちは白装束を身にまとい、無言で集まる。佐藤と田中はこっそりとその様子を見守る。

佐藤:「(カメラで撮影しながら)すごい…これは異様だ。」

田中:「でも、どうしてよそ者が参加すると危険なんでしょう。」

ト書き:村人たちが神社の中心に位置する大きな炎を囲む。突然、村長が高らかに声を上げる。

村長:「今宵、我らは先祖の霊を呼び覚まし、この村を守る!」

ト書き:村人たちが一斉に唱えるように何かを呟き始める。佐藤が音声を拾おうとマイクを向ける。

シーン7:不測の事態

ト書き:カメラが突然揺れる。佐藤が何かに惹き寄せられるかのように祭りの中心に向かう。

田中:「佐藤さん!?どこへ!待ってください!」

ト書き:佐藤は意識を失いそうになりながらも、祭りの中心に引き込まれていく。村人たちが不気味に微笑む。

佐藤:「(ふらふらと)なんだ…この感覚は…。」

ト書き:炎の前で佐藤が崩れ落ちる寸前、田中が彼を必死に引き戻す。

田中:「戻ってきてください!佐藤さん!」

シーン8:翌朝

ト書き:宿の部屋。佐藤が目を覚ます。頭に痛みを感じながら、起き上がる。

佐藤:「う…夢だったのか…?」

タケシ:「(入ってきて)お目覚めですか。祭りの後、意識を失って倒れていました。」

佐藤:「火祭りは…一体何が…。」

タケシ:「先祖の霊を迎える儀式です。でも、それ以上は教えることはできません。」

シーン9:村を去る

ト書き:二人が車に乗り込み、村を後にする準備をしている。村の出口で再び村長が出迎える。

村長:「もう帰るのか。」

佐藤:「はい。この村のことは記事にするつもりはありません。それが約束です。」

村長:「ありがとう。そして、もう二度と戻ってきてはいけない。」

田中:「(車が走り出した後で)何だったんでしょうね、あの火祭り…。」

佐藤:「…俺たちが知ってはいけないことなのかもしれない。」

ト書き:車が村を離れ、霧の中に消えていく。村は再び静かに、そして謎に包まれたままである。

終幕

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