**8月1日**
今日は久しぶりに故郷の村に帰ることになった。あの村は山奥にあり、昔から「神隠し」の伝説がある。子供の頃、何度か友達が突然いなくなったことがあったが、当時はただの悪戯や家出だと思っていた。しかし、歳を取るにつれ、村にまつわる奇妙な話が本当なのではないかという疑念が胸をよぎる。
**8月3日**
村に着いた。静かで、時間が止まったかのような場所だ。幼なじみのタカシも元気そうで、久しぶりに再会できたことが嬉しかった。彼は今でも村に住んでおり、私には知らない村の出来事をいくつか話してくれた。特に気になるのは、今年に入ってから村人が何人か突然失踪しているという話だ。もちろん、村人たちはそれを「神隠し」として噂しているようだ。
**8月5日**
今日、森の中を散策していると、不思議なことがあった。突然、霧が立ち込め、周りが何も見えなくなったのだ。10分ほどで霧は晴れたが、その間、辺りの音が全く聞こえなくなった。あの時の静寂は今も耳に残っている。帰宅すると、何故か時計が20分進んでいた。実際には10分も経っていなかったはずなのだが。
**8月8日**
タカシが行方不明になったという知らせを受けた。昨日まで普通に話していたのに、突然いなくなるなんて。村中が騒然としている。彼の家族は心配で顔色を失っていた。村の人々は再び「神隠し」の仕業だと言っていたが、まさかとは思うものの、私の心にも不安がよぎる。
**8月10日**
私はあの日の霧のことが気になって仕方がない。あの場所にもう一度行ってみることにした。森の中を歩いていると、また同じ場所で霧が立ち込めた。今回は少し長く、15分ほど続いた気がする。霧が晴れると、そこには見たこともない不気味な神社があった。何かが私を呼んでいるような気がして、どうしてもその神社に近づくことができなかった。
**8月12日**
タカシが見つかった。しかし、何かがおかしい。彼は帰って来た瞬間から、どこかよそよそしく、以前の彼とは別人のようだ。家族も同じことを感じているようで、彼を心配そうに見守っている。具体的に何が違うのか説明するのは難しいが、彼の目には何か見えない力が宿っているかのようだ。
**8月14日**
村中が何となく不穏な空気に包まれている。タカシだけではなく、他の行方不明だった人々も次々と帰ってきたが、皆どこか変わっている。彼らは同じ場所に行っていたのではないかと噂され始めている。私は村の外の世界からこの出来事を客観的に観察しようと思っていたが、気付けば恐怖心が勝っている。
**8月16日**
昨日、夢に神社が現れた。あの不気味な神社が、昼間と同じ姿で私を呼んでいる夢だった。目が覚めると体中が冷たく、汗でびしょびしょだった。どうやら、夢の中にいる間、何者かが私の魂を引っ張っていこうとしたような気がする。
**8月18日**
昨晩も同じ夢を見た。神社の周りを謎の霧が包んでいて、その中から手が伸びてくる感覚がした。今日、タカシにその夢のことを話してみると、彼は突然顔色を変えて私に静かに言った。「君も呼ばれているのかもしれない。けれど、決して従ってはいけない。」彼の目には、何か必死で訴えかけるような光が宿っていた。
**8月20日**
また神社へ行こうと思う。立ち寄らない方がいいかもしれないと思う反面、何かに強く引かれている。タカシの忠告も頭から離れないが、自分自身の目で何が起きているのか確かめる必要がある気がする。何かを知ることで解決するものがあるかもしれない。
**8月21日**
行ってきた。あの霧の向こうには、やはり神社が隠されていた。奇妙なことに、神社の周りには、たくさんの石碑や古びた祭壇があり、どれも不気味な呪文のような模様で覆われていた。そして、そこから離れようとした時、背後から誰かが私を抱きしめる感覚があった。振り返ると誰もいなかった。
**8月23日**
タカシが再び神社の方へ向かったらしい。そして、それ以来、彼は戻ってこない。村は再び彼の行方を捜しているが、見つからない。私は、彼が何かから逃れようとしていたのかもしれないと感じる。私ももう限界だ。この村を離れることに決めた。
**8月25日**
これが最後の日記かもしれない。私が村を出ようとしていたその時、再び霧が立ち込め、私は動けないまま、何かに引かれるように森へと向かわされている。私はここに来るべきではなかったのかもしれない。神社が、いや村全体が私を飲み込もうとしているようだ。どうか、無事にこの記録を誰かに届けて欲しい。
もしこれが私の意識を失う前の最後の記録ならば、これを読んでいる誰かに伝えたい。この村には、誰も理解できない、異界との接触が確かにあると。وابعدوا عن هذا المكان!